留置所生活

留置所なんてのはヒマなところだよ。
こうも毎日ヒマな日が続いたりタバコが値上がりしたりすると私が留
置所に入っていた頃を思い出すんだよな。
TVや映画で逮捕の瞬間や刑務所の生活なんかは一部知られているだ
ろうが、留置所生活を題材にしたものは少ないから世間でも留置所と
拘置所、刑務所の違いを正確に理解している人間は少ないだろう。知
らなくてもいいんだけど、興味があるなら読んでくれ。
私だって留置所に拘留されることは滅多にないし今までも3回(3件
)しかないけど、ここでも他人がなかなかできない事をやってやった
んだ、偶然ってのもあるけどね。
同房の奴を病院送り
寝るときはオカマに手でコカせていた
看守に私だけ本名で呼ばれていた
一日2本のタバコを強制的に禁煙させられていた
東京地検で他囚人を巻き込んで暴動寸前
地検の地下待機室でゴリラ(看守)をからかい、つまみ出された。

留置所ってのはいろいろな犯罪者が捕まってすぐに入れられる豚箱っ
やつで所轄の警察署の中にある。警察署を外から見てごらん、鉄格子
や金網で厳重になっている階が必ずあるから、そこがその警察署の留
置所になっている階さ。
誰もが捕まってすぐは心象を良くしようとして、おとなしそうに振舞
うものだが私にはそれが出来なかった、尾崎豊じゃないけど(笑)。
留置所は拘留期限ってのがあって20日前後しか滞在できない決まり
になっているんだ、その後は拘置所に送られるか釈放されるか罪によ
って違うけど刑が確定するまでは全員被疑者なんだよ、無罪になる可
能性だってあるんだから「いい人ぶっておとなしく」なんてしてられ
るかよって思ったんだ。できることなら快適な留置所生活を送りたい
と。留置所ってのは次々と逮捕者が送り込まれて来るからいつも満室
状態なんだ、そしてご他聞に漏れず数が多くて騒がしいのが中国系の
オーバーステイの連中だ。奴らは罪も軽いし犯罪意識がない、まるで
修学旅行気分で日本の警察をナメきっている。入所の際も刑事に「あ
いつ等に関わらない方がいい相手するなよ」と、耳打ちされた。とい
う事は警察も手を焼いているって事だろ?そこで私は入所早々、うる
さい中国人の房のリーダー格みたいな奴に「てめぇらうるさいぞ!静
かにしやがれっ!」とばかり一喝してやったのよ。そしたらもう蜂の
巣を突いたような大ブーイングでさ、その日は多勢に無勢で私一人
が大犯罪者のような勢いで大変だったよ。2,3日は険悪な状態だ
ったかな、留置所内で鉄格子を挟んで睨み合いってやつだったよ。
中には中国マフィアの連中もいたからね、「アンタここ出たらワタシ
の仲間にリンチね」なんて脅してくるんだ。私は一歩も引かなかっ
たから看守が間に入ってとめた事も何度かあったな。
ところが私には勝算があったんだ、「運動の時間」といって朝に2本
だけタバコを吸う時間があり、各房から出て広間みたいな所で喫煙
タイムを皆でするんだが、そこで私が喋っていたのは得意のエロ話
だったんだ。中国人だって日本語は解るし若い連中が多い、ヒマな
留置所内ではシャバのエロ話がウケるもんさ、見張り役の看守まで
が一緒になって猥談(私は講師)に花を咲かせたよ、そうしたら一
気に険悪なムードが解消しちゃって逆に私の言う事をよく聞くよう
になって私は一目置かれる存在となり、私のいる房に移りたいとい
う中国人も何人か出てきたんだ。だから看守も私を本名で呼んでい
たんだよ。
機が好転すると思わぬオマケまで転がってくるもんで、タイ国籍の
オカマが入所してきたんだ。初めは外国人グループである中国人の
房に入れられていたんだが、男しかいない中でオカマは貴重な存在
なんだよね、そいつが何故か知らないけど私の房に来ることになり
私はその日から禁欲生活が解除となった。勿論おおっぴらにはでき
ないから消灯後に毛布の中で手コキだけどね、目をつむってりゃ男
でも女でも大差ないからな。今にして思えば、あのオカマが房を移
動してきたのは看守からの「差し入れ」だったのかな?真意は分か
らないけど留置所も住めば都だったって事だな。
同房の奴を病院送りにしたのも本当の話だ、それは私の粛清だ。
食事中に平気で屁をこいたりする奴だったんで、チィとばかり喝を
入れてやったんだ、運動の時間にも皆の前で正座させてやっていた
んだ、看守も文句言わなかったからね、そいつにしてみりゃ私の喝
が耐えられなかったんだろうな、ある日突然発狂しちゃってそのま
ま精神病院へ連れて行かれて帰って来なかった。本当に発狂したの
か演技だったのかは不明だが私のおかげで留置所から出られたんだ
から今頃感謝しているだろうよ。
まぁ留置所なんてやり方次第でそこそこ退屈しないで済む所だ。

地検のときの話も書こうと思ったけど疲れたからまた今度ね。
5188(111)              AM9時10分