輪になって

用事で山梨へ向かっていた、車内には私を含めて3人。
昨日一睡もしてない私は眠くて仕方ない、助手席で睡魔と闘っていた。
他の二人は私より年上で共に刑務所経験者、獄中での話しに花を咲かせて
いた。
車が高速道路の入り口に差し掛かった付近だった。
数名の交通警察がいることに気付く、
「シートベルトも飲酒も大丈夫、問題ないな・・・」と、誰かが言ったその
ときだった。
一人の警官が私たちの車に手旗を向け停車するように指示をした。
「何だ、何だ?何かやったか?!」
一様に3人はそう思った、叩けばホコリの出るようなカラダの3人は、警察
を警戒しているしこの様な場合でもきっと動揺ははしるのだ。

思い当たる節はいくつかあるが、数多くの高速へ入ろうとしている車の中から
私たちの車だけ止められるとは、ちょっと嫌な予感がするものだ。
「Nシステムか?追われてるのは誰だ?」そう誰もが思った筈だった。
「ノラ猫拾っちゃ悪いのか?」
そんなジョークで笑わせようか・・・なんてことも思ったりした。
結局警官が私たちの車を止めたワケは、後部座席に乗っていた一人がシート
ベルトをしていなかったからだった。
今回は書類で注意という事で何もなくてよかったが・・・。

車は中央高速を走っている。
獄中経験者は面白い話をよく知っている、特に獄中での性欲処理に関しては
他では聞けない話が多い。
日本の刑務所というのは、未だに一世代も二世代も昔に作られた古い法律が
支配している。
その中でも「陰部摩擦罪」というのがあり、オナニーも禁止なのだ。建て前と
しては風紀を乱す行為ってことなんだろうが、本音の部分は違うだろうな、
刑務所は罪を償い反省するところだから、たとえ妄想であっても不埒なコトは
考えちゃならぬ、つまり思想から何から締め付け、服従させ受刑者を管理しよ
うってハラなんだろう。昔の人間の考えそうなことだ、まるで北朝鮮みたいだ。

それでもしぶとく性欲処理のご法度に挑む輩もいるそうである。
「タチ」と「ネコ」とは女性同性愛者に使われる隠語で「タチ」が男役で「ネコ」
が受身の女役である。これと同じように男性同性愛者にも「カッパ」と「アンコ」
という隠語がある。これの場合「カッパ」が男役である。
刑務所では受刑者たちを部屋に振り分ける際、同性愛者同士を同部屋にする。

(ここから先は車に同乗していたその人の言葉で。)
「そんでよー、カッパの連中がその日は一人も上がって来ないんだ(作業に)
 4人部屋の4人ともだぜ!
 おかしいだろ?何かあったんじゃないかって看守に聞いても答えねぇ。
 ますますおかしいと思うだろ?えっ?
 一人二人が部屋で喧嘩ってぇわけじゃないと思うよなぁ
 4人ともだからさー
 それでムショん中の情報網で探らせたんだわ
 そしたらさぁ、中にゃ口のやっこい看守もいるんで、分かったんだけどさ
 その4人、何してたと思う?
 ふふふふ!
 4人で輪になってフェラチオしていたらしいぜ!」

どうやらご法度である淫行の現場を見つかってしまい、そのまま4人とも懲罰房へ
送られたらしい。
それにしても想像できるだろうか?
囚人服を着た坊主頭の囚人が咥え合っている光景を、しかも4人!
さすが刑務所内、こちらの常識では考え付かない実際があるようだ。
みつけた看守もさぞかし驚いただろう。

ちょっと前、ある人に冗談で言われたことがある。
「沖ちゃんの部屋に誰も泊まりにこないときは、そのネコちゃんが相手なの?」と。
私は笑ってそのジョークを流した、
「まさか、オスだしそれに・・」と言いかけてやめた
「それに・・」のあとに言いかけた言葉は「サイズも小さすぎるし」だった、
そんなサイズをチェックしているのではないか?という自分に気付いたからだった。
愛犬、愛猫、または哺乳類を世話すれば肛門ぐらい自然に目に入る。
私が心配したのはつまり、とっさにそんな自分を否定するって事は、その裏返しもあ
るんじゃないかって事。
動物は好きだが、性の道具にするような行為は否定したい。
邪険にしたり虐待すれば、媚を売らない動物は飼い主を選ぶと聞いたことがある。
メイには間違った教育や私的な感情をぶつける気はさらさらない。
その証拠に、
今もメイは私のベッドに丸くなって寝ている。

144474   H21 8月2日  PM11時5分