矢吹 3

矢吹薫 3

介護の仕事に従事して、かれこれ10年になる。
ヘルパーになるきっかけはそうだね、人に絶望していたからかな。前から色々あってさ、生きていくのが辛かったんだよ、こんな俺でも多感な方でね人は勝手な生き物だって事がよく解っててさ、そんな事はずっと前から解っていたけど、俺も人なんだから勝手な人の1人なんだよなって気付いちまったわけよ。
それならとっとと人生終らせりゃいいんだろうが、それがなかなかできないのが人の勝手なところでね。
潔い奴ならとっくに青春の終わりと共に実行するのだろうけど、生憎と俺は未練がましい性格でね。俺は若い頃から半分はそんな気持ちもありながら、半分はもっと夢ある将来もあるんじゃないかって、自分にムチ打ちながら騙し騙し生きてきた。
だから、いつ、どのように、なんて事も若い頃からいつも考えていたよ。

反面として生きて行くにも考えていた。財産を持つ目的の商売なら介護のようなシルバー産業か葬儀関係さ、そんな事も20年前から知ってたさ、女関係の仕事も今なら面白おかしく楽しめるだろうがこの先どうなる?人口の減少と少子化だぜ、ニーズは益々厳しくなるんだぜ、一代限りで自分勝手な満足感だけ得ようと思うなら女関係の仕事くらいだなって。
そんな事で女関係の仕事もボチボチやっていたが、10年前にすっかり足を洗い清い体にはなれなかったが、新しい人生の扉を開いてみようと思ったわけよ、俺を利用しようとする奴ばかり目につくが、俺を必要とする人がまだいるならもう少し生きてみようかなって、心だけは神聖になりたかったからな。
あのさ、俗に言う神聖って何か分かるかい?
世の中で善とか正しいとされてる事ばかりじゃないんだぜ。