男たちの大和

ユキコと映画を見に行った、ユキコは初めから泣き、泣き声も抑えられ
なかったので私は「皆が映画見てんだから静かに泣きなさい」と、言った
ほどだった。感情の起伏の激しいこの子は、自分の感情をコントロール
る事が難儀なのだろう。帰り道インド料理の店へ寄りユキコに金を渡し、
会計をさせ私は店外で待っていたが、なかなか出て来ないしびれを切らせ
店に戻ってみるとユキコが、インド人の店員と長話をしているではないか
私は「いつまで待たせるんだ?!」と言い、店から出た時「非常識だろ人
を待たせておいて、そういう自分勝手なところを治せ」と、強く言ったと
ころ、「いいじゃないの、私あのお兄さん気に入ったんだもん」ときた。
私には解っていた、ユキコはインド人と話している姿を私に見せ付ける事
によって私にヤキモチのような感情を抱かせようとしたのだ、これは私の
前妻がよくつかった手であり子悪魔的な女なら必ずやる常套手段である。
私は「くだらん勘違いをするな、インド人と話をしてた事を言ってるんじゃ
ない、俺を寒空に待たせた事を注意してるんだ」と、言うと ユキコは急
に怒り出した、たぶん自分の心を見抜かれた悔しさからだろう 「なによ
うるさいオヤジね、文句ばかりいってさ〜!私は仕事がしたいから住んでる
のよ、その為に掃除も食事も作っているしSEXだってさせてるのよ!!」
と、きたもんだ。ユキコの本音が出た瞬間だった。私はしめたと思った、
何故なら彼女がやっと本音を口にだしたからだ、私は平然と「ほ〜面白い
こと言うねぇ、SEXをおねだりしてくんのはそっちだろ、俺は仕事でやって
んだぞ、出来る事なら回数を減らしたいぐらいだよ」そう言って鼻で笑って
やったらユキコもさすがに本気で怒り出し悪態の限りの言葉で私を罵ったが
、私はこれを待っていたのだ 本音で喋るという事は自分を曝け出す事であ
り、逆を返せば その言葉や行動を受け止め、解釈してやり噛み砕いて諭し
てやればいいのだ、海千山千の女達を相手にしてきた私には解る、ユキコの
幼い心を全うに素直に導いてやるには これが一番、この方法しかないのだ。
威圧して突き放したり、下手にでたり、煽てたりしてはいけない、かといっ
てユキコの親がやってきた様に、甘やかせては何にもならない。ユキコの事
を思えばこそ苦言も必要だし、試練を与えその苦痛を理解してやればいいの
だ、自己流の荒療治かもしれないが病院の薬には出来ぬ芸当なのだ。私の
業界でなくてもいい、ユキコが相応の仕事を出来るようになってもらいたい。
私とのマンツーマンに耐え、今までとは違う「逃げない人生」であって欲し
いのだ。今はまだユキコが「はい」「感謝してます」という言葉はその場し
のぎかもしれないが、やがて独り立ちした頃 実感してくれるだろう。別に
感謝されたい訳ではない、ユキコが特別な訳でもない、私は私を頼ってくる
者に対し平等に接しているだけだ、そしてその者が成長していく様をリアル
タイムで見られる楽しさを味わっているのだ。   28日AM1時40分