月下の狼
今日も肌寒そうな一日がはじまる。
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たまには真面目な哲学的な内容も書いてみようかな。
狼さんと羊君というテーマでどうだろう。
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羊は弱いがそれ故に集団をつくるという能力に長けている。
人間でいえば民主主義、平和主義、といったところではないでしょうか。
個々が弱くとも集団となれば強く、また序列もあり、ガードとして
牧羊犬たちに守られている。
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羊たちはいつも口々に言ってるのです。
なんで狼みたいな生き物が地球上に存在するのだろう?
あんな奴らはみんなとっ捕まえて死刑にすればいいんだよ。
僕らの生活を脅かすような狼なんて、きっと神様の失敗作だね。
狼終了〜!
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そして牧羊犬たちも口を揃えて同調します。
狼?あんなの俺たちがいつでも追い払ってやるさ。
そうさ、一匹だけじゃ何〜んもできないから徒党を組むんだぜ。
ていうか、俺たちのほうが強くね?
そうだよな、俺は見たこともないぜ、ビビッてんだな。
遠吠えなんてしちゃってさ、うざいちゅうんだよ、ムダ吠え乙。
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そんな笑い声が聞こえてきそうな、のどかな放牧地のその奥の森では
狼たちがお腹を空かせながら、虎視眈々とそのチャンスを伺ってたりします。
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上記の光景は、どこにでもある田舎の風景。
そしてそれは人間たちが勝手に思い浮かべる勝手な理想なのです。
少し前までは狼は、羊という家畜に危害を加える害獣とみなされ徹底した
駆除の対象でした。日本狼が明治以降姿を消してしまったのもそのためです。
現在でこそ狼の生態も判明し、狼は実に愛情深く利発な動物であることは
研究者によって知られてますが、過去の悪評により今でも狼は怖い生き物だと
思っている人も少なくはありません。
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ではいよいよ本題に入ろう。
仮に牧羊犬に育てられた狼がいたとすればどうだろう?
その様な環境に生まれ、その様な暮らしをしている狼がいたら?
月夜の晩に遠吠えが聞こえたりしたら、本能が目覚めたりしないだろうか?
自分の住んでる世界では、絶対にあってはならぬ事を密かにしてみたいと
思わないだろうか?
いつも何か違和感を感じ、何かに抑圧され、満たされない思いをしている
のではないだろうか?
一度でいいから羊の肉を食べてみたいと思うのは悪い事なのだろうか?と、
思わないだろうか?
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人間社会でもそんな孤独な狼みたいな存在は実在する。
時折世間を騒がせる凶悪、狂気のような犯罪、その犯人がいい例である。
そういった犯罪者の多くは、普段から乱暴なわけではない、常識や教養が
ないわけでもない。それなりの立場であったり、家庭を持ってたりもする。
では「何故あんなことをしたのか?」と訊ねられると、
一様に「やりたかったから」と、答えるという。
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「やりたかったから」
まるで当然の如く言い放ち、反省や被害者への哀れみなど微塵も無い。
後になって「妄想の中の魔王」「使命感」などと架空の話を付け加える者
もいるだろうが、それは全て言い訳。
「やりたかったから」その言葉こそが正直な本音なのである。
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この常識では考えられないような発想、と思う発想。
それは羊側から見た発想なのである、孤独な狼からすれば羊を殺して食べること
の何が悪いのか?となるのだ。
孤独な狼は「やっと好きなことができた、やっと満足できた」と思っているかも
しれないのだ。
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たまたま平和に見える環境の中で事件を起こすと、犯人はいかにも特別な、
或いは狂人、異端児とされるが、その深層心理は誰にでも起こりうる事。
今日食べたハンバーガーやフライドチキンで涙した人はいるだろうか?
その牛や鳥が殺される瞬間の絶叫を想像した人はいるだろうか?
宗教の名の下に、今尚殺戮されている人々は後を絶たないではないか。
アフリカの飢餓児を、多くの者が見殺しにしているではないか。
皆、麻痺してるだけ、平和ボケして感じなくなっているだけ。
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狂気の芽は、誰にでもありその状況下では快感も感じ得るというのが人間。
生きているだけで罪な事だと言えばそれまでですが、生きるという事はそう
ことであり、そうしていかねば生きてゆけないのが生き物です。
そして生きてゆく以上は、弱肉強食の世界からは逃れる事はできない。
喰われる側がいいのか、それとも喰う側でいたいのか。
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そこまで究極に突き詰めて考えれば、犯罪者が行った行為もそれがいかに
特殊であろうと、実は特殊でもなかった事に思えてくる。
ただ一般の社会には規律があり、常識と設定されている日常がある。
その中で常識をはみ出したという事で罰せられるわけだが、本文のように
書き表せば罪とは何なのだろう?となってしまう。
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それについては、答えが無いようなものかもしれない。
敢えて言うならば、その行為がバレてしまった罪、不手際だった罪ではな
いだろうか。
総じて、犯罪を起こさぬよう、巻き込まれぬよう注意するしかないのだろう。
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280000 (1744) H24 11月27日 PM11時55分