瞳の約束

人それぞれ色々な人生がある。
今日出会った子は、まだ人生という舞台のほんの第一幕を歩み始めたばかり
といった子。
ただ私がいるような業界で、私と出会う子なんだから深窓の令嬢ってわけではない。
それなりの苦労人でありそれでも強かに生きていこうとしている。

その子の瞳はとても美しい。
きっとその子の瞳はこれからもずっと美しいだろう。
久しぶりに出会った澄んだ瞳や、あの素直な感性は生まれついてのもの。
その汚れを知らぬような瞳に見つめられて戸惑いを覚えた。

無論、何も知らないわけではない。
むしろ知ってしまっている、人間の心の悪魔っぷりも、弱者に対する現実の冷たさも。
それでいて彼女の瞳は美しいのだから、それが素晴らしいと感じるのだ。
威圧するような目でもなく、虐げられた者のもつ卑屈な影もなく、ただただ澄んでいる。
あれは強いとか、弱いといった次元の者のものではなく、自分の運命を素直に受け入れてきた者のもの。
そんな瞳には魅かれるものがある。

私の「神」を彼女に見せてやりたいと思い、ドライブへ行く約束をした。
神といっても偶像の類ではない。
私はどちらかといえば神道よりの考え方である。
つまり山や河などその土地の象徴そのものを神としてとらえ、その大自然の中で生かされている自分に感謝する
という考え方である。
私の命を何度も奪いそうになり、また何度も助けてくれた真鶴の海を見にドライブへ行く予定。
彼女に神を感じてくれとかとか、そんな堅苦しいことではなく、ちょっとした小旅行を楽しんでもらいたいだけ。

彼女は花も好きだそうだ。
まだ先の話ではあるが、来年の春に桜を見にゆく約束もした。この約束はこの業界に於いてはとてもありえな
いかもしれないが、私はその日が来る事を 信じてみたい。

253578   H24 6月1日   AM1時10分