母上様
昨日、実家の帰り道に一緒に帰った妹から聞きました。
年末に家族で行った温泉旅行、あの旅行がもしかしたら最期の旅行
になるかもしれない?と、思っていらしたとか。
今年からは入院生活になるや?と気を揉んでおられたとか。
母上様は体の異変(血尿)に気付かれて、病院で検査を受けられ、
その結果が癌の危険度レベル5のうち3ぐらいだったとか。
内視鏡検査でも原因が判明せず、再検査を受けられるそうですね。
その事を家族に心配掛けまいと・・・
私はとてもショックです。
それを知らなかったのは、きっと家族で私か兄だけです。
兄の家庭は上の子が受験の時期だから、そういう心配事を言わないよ
うにするのは分かります。だけど私には言って欲しかった。
母上様の私に対する心配は分かってます、一番出来の悪い私だけが、
いまだに心配させるような仕事をし、その仕事内容だって充分にはお解
りになっておられないものと思います。
お友達の多い母上様の事でしょうから、きっとお友達との会話の中で、
私の話も出るでしょう、そんな時に母上様が答えに困ってらっしゃる
だろうと思うと、私はなんて親不孝な息子だと思っております。
・
なんて事でしょうか、私はこんな状況でも、母上様に新しい仕事先の
報告をする事が出来ないのです。
それが園芸関係かシルバー関係なのか、または別のものになるのか。
立派な仕事であれば、今度こそそれが私の最期の職業です。
私も早くその仕事について話をして、母上様を安心させてあげたいと
思っております。
普通の方でしたら、「早く孫の顔を」と思うところでしょうが、出来の
悪い私は、その代わりに「安心な仕事の報告」しか出来ません。
私と結婚してくれるような女性も、私の子供を産んでくれる女性も、今
のところ思い当たらないのが残念でなりません。
・
私は昨日、変な夢をみました。
今にして思えば、あの夢は今日妹からこの事を知らされるという前兆だ
ったのかもしれませんね。
大きな錦鯉を釣り上げて、その生き血を母上様へという暗示だったのか
もしれませんね。
私の口に涌いたウジ虫は、汚れた私自身だったのかもしれませんね。
水晶といい、牧師といい、普段私はみないような夢でしたたので、今は
とても神聖な気持ちであの夢を思い出しております。
・
「家族に心配を掛けない」というお気持ちは無用です。
もう既に心配はしております、今回は益々不安になっておりますが(笑)。
そんな事は当たり前じゃないですか。
母上様は世界一のは、父上と並んで世界一の両親です。
私にとり、今まで私を本当に愛してくれた女性は、母上様だけだと思って
おります。
・
母上様はいつか私の幼い頃、こんな話をして下さいましたね。
「家族が濁流に流されて、自分の親か子供どちらかを犠牲にせねばならな
いとしたらどちらを選ぶか?」って内容のお話を。
そしてその答えも教えて下さいましたよね、私は今でも覚えてます。
「子供はまたできる、でも親は二度と遭えない」、でしたよね。
あのたとえ話は何の話だったんでしょう?孔子、老子でしょうか?それと
も母上様が広島の原爆で、幼くして家族を失われご苦労をされていた頃に
誰かから教わった話なのでしょうか?
私も一時は結婚し、人の親になった事のある人間です。ですから、その時
になってみないと分からないというのが結論でした。
でも今は違います、私の残りの寿命の三分の一を差し上げたい気持ちです。
残りの三分の二は、私と父上の分です。
現実的には出来ぬ事でしょうが、気持ちの上では差し上げます。
母上様は、決して受け取らないと重々解っておりますので言葉にはしませ
んよ。
「では!」
もう、差し上げましたからお返しにならないで下さいね!(笑)
・
今度の検査結果、いい結果になるといいですね。
そう願ってます。
・
この日記は、きっと母上様はお目にする事はないと思います。
それでいいのです、毎日たくさんの方々が読んで下さってます。
そういった方々も、同じような出来事が身の上にあるのです。
私もその中の一人と言う事で、私に向かって書いているのがこの日記です。
もしかしたら、母上様に今日の気持ちを言ってしまうかもしれません。
私は弱いから、黙ってられないかもしれません。
そうなってしまっても、いいのかもしれません。
人生って、何が起こるか分かりませんね。
こういう日記を書いていると、何だか宗教家のような・・・何とも複雑な
それでいて清清しいような・・・何とも妙な気分です。
母上様に寿命を差し上げて、何か少し安心したのかもしれません。
眠くなってきましたので、そろそろ寝る準備をします、お休みなさい。
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91826(92) 28日 AM2時6分