加齢臭

今週も相変わらずな日々だ、変化がないから何を書こうか考えてしまう。
仕方ないから、成就出来ないであろう夏美との恋愛ゴッコでも書こう。
夏美とは昨日も映画に行った、エイリアンとプレデターのやつ。
あまりに面白くなかったので途中で寝そうになった、ホッキョクグマ
方の映画を観るべきだった。
あ、そうそう、面白い事も一つあった。
映画館に入ると既に上映されていて館内は真っ暗だったんだ、いつもの
ように両手にコーラやポップコーンを持ち、目が慣れぬ暗闇の中で足元
のライトを頼りに席を探して移動していた。
先を歩いていたのは夏美、やっと気に入った席をみつけ座ろうとした時
だった。バッシャーンと、紙コップの飲み物を夏美が床に落とした。
私は初め何が起こったのか分からなかった、だから
「どうしたの?」って聞いたんだ。そうしたら彼女は怒ったように
「こぼしちゃったのよ!」と、言った。
「本日の一発芸か?今日は大胆な芸だね」と、私は言ったが彼女は笑っ
てくれなかった。
私は嘲笑したつもりではなかった、先日も喫茶店で待ち合わせた時、彼女
が飲んでいた飲み物が器官に入ってしまい、鼻へ逆流して咽て鼻が痛いと
言ってたので(鼻から飲み物が出るというやつ)
「大丈夫?」という代わりに「すごい一発芸だね」と、言う事によって、
笑いの要素で恥ずかしさを紛らわせてやりたかったのだ。
今回だって映画館という清聴すべき公衆の中で、飲み物を床にぶちまけた
のだ。たぶん前の席や、その前の席あたりまで流れていっただろう。
突然のハプニングに、彼女はどうする事も出来ず穴があったら入りたい状
態だっただろう、だから私はジョークで誤魔化してやろうとしたのだ。
それなのに彼女は笑ってくれなかった。
それどころか「隣だと沖本臭が臭くて息が詰まりそうだった」なんて言う
んだ。
沖本臭とは、私の事務所の匂いの事。
その匂いの原因は定かではないが、タバコや染み付いた汗、または加齢臭
などが渾然一体となっているのだろう。その匂いを私は嫌いだが人によっ
ては賛否両論だ。ただワキガのような強い匂いではなく生活臭であり、部
屋にいても10分もすれば気にならなくなる。外で人と会っている時に
「臭い」とは一度も言われた事はない。
たぶん着ていった服に部屋の匂いが付いていたのかもしれない。自分の匂
いだから自分ではあまり気付かない、夏美が特に鼻が利くのだろうか?
それとも私に「一発芸」と、言われたお返しなのだろうか?
ただ、そういったデリカシーのなさというか、彼女の嫌いな点。

沖本臭については、夏美以外の女でも、泊まるような関係の女とはよく話
をする事がある。
そんな時は、いつもこう言う。
「俺を好きになれば、この匂いも好きになるぜ!」って。
夏美にもそう言ってやるが、「ムリ〜!!」ってのがいつもの答え。
ツレナイというか、やっぱり仕方なく私と会っている程度なのかな?と思
い。「何で俺と会ってくれるんだ?」って聞いてみたら
「沖本さんが可愛そうだから」だってさ!
夏美って子、本当は根性悪いのだろうか?もしそうだとしても・・・いい。
私に加齢臭が漂うと言うなら、そうなのだろう。
キツイが、歯に衣着せぬストレートな正直さや、こんな私と食事を付き合
ってくれるその彼女の優しさを評価したい。

「同姓だったら大親友になっていたよね」と、言ってくれるのはアキ。
私はそれを真似て、同じような言葉を夏美に言うが、答えは「そう?」だ。
それが彼女の、今の私への接し方。
夏美に敢えて再教育をする気は全くない、そんな事をしてしまっては別の
意味での悪い永遠が遠慮なく忍び寄るだろう。今までの多くの女のように。
今年こそは友情を大事にしたいものだ、たった二人しかいない女友達だから。

明日はドンキーで布団を買う予定、夏美にも手伝ってもらう。
その後、近所のフグ店で食事の予定。ひれ酒の呑みっぷりのいい夏美の姿
を拝見するとしよう、その後は未定。
夏美は「絶対に食事が終わったら帰る」と、言っているが。

90896(300)   22日  PM11時25分