アンコウ鍋

運転免許が失効になってしまったので、復活手続きを無事終了させた。
久しぶりに早起きをして今日は時間があったので、夏美に連絡した。
彼女は丁度、岩盤浴へ行こうとしていたらしく千住駅の辺りにいたの
で、上野まで呼び出した。
最近は池袋ではなく、彼女のいる場所へ沖本犬は出掛けていく。
上野駅で落ち合い、アメ横をフルーツを食べながらブラブラ歩いた。
ブラブラ歩いたが、けしてラブラブだったわけではないのがミソ。
沖本犬の役目は、荷物持ちと周辺の道案内、それとお食事処への案内だ。
一昔前でいう「メッシー」という役回りである。
私はアメ横センタービルの中華食材店でピータンを買った。

御徒町のリューツーで宝石を見て歩いたが、夏子はそういった安物には
興味がないらしい。
「パールならミキモトよね」と、そんな庶民には聞き慣れないブランド
名の話が彼女の口からは出る。
歩いていると、アンコウ鍋の店があったのでそこへ入るか打診してみる。
驚いた事に、彼女はアンコウという魚も、アンキモという食い物の正体
も知らなかった。
それなら沖本犬の出番とばかり、その店へ入った。

食事をしながら酒を飲んだ。
夏子は酒が強い、私がビールを半分飲むか飲まないうちにロックの焼酎
を注文している。
彼女は岩盤浴へ行こうとしていたのに、予定を私に変更された。その事
について酒が入ったせいか威勢よく突っかかってくる。
そこで私は、「それなら沖本温泉へ来なよ」と、矛先をかわそうと軽く
イナして言ったつもりが、本当にそうなってしまった。(ラッキー!!)

彼女は「化粧道具をもってないから」とか「明日に予定があるから」
みたいな、定番のような断り文句を言っていたが、西部デパートで買え
ばいい、化粧品も買ってやるよ、と言う事で早期に解決をみた。
(育ちのいいお嬢様は、本当に人の気持ちを良く分かって下さる。)

問題はここから。
西部デパートの化粧品売り場へ来ると、「20分だけ待ってて」と彼女。
化粧品を買ってやると言ったが、自分で見て回って選びたいらしい。
仕方なく私はデパートの外へ出てタバコを一服し、頃合をみて化粧品売り
場へ戻ってみた。
そろそろ20分経つし、もういい頃じゃないかと思ったからだ。
ところがどうした事だろう?
夏美は販売員を相手に素ッピンでショウケースの前に鎮座しているではな
いか!
ファンデーションを買うだけなのにフルメイクが必要なのか?!
今からフルメイクすると・・・20分はおろか何分かかるか?
私は待ち続けた、彼女は30万もするムートンの毛皮と、それに似合う
服装や装飾品で着飾っているのに、方や私はいつもの格好。
これじゃ、いくらなんでも不釣合いだろうと思い、店外で待っていた。
それにしても私を待たせて自分はフルメイクとは・・・これから何処へ
行こうと言うんだ?俺の事務所じゃないか。
何をしようと言うんだ?風呂に入って寝るだけじゃないか・・・まったく。
ペット同伴を禁止されている店の前に繋がれて待っている犬の如く、私は
寒風の吹きすさぶ中で1時間以上も待っていた。

このシチュエーション・・・前妻と結婚していた頃と同じだ。それでも
あの頃は、ヒロ君も一緒だったので、オモチャ売り場などで時間を潰せた。
まぁいいか、美を追求する女心はいつの時代も誰も変わらない。
これもまた一興、女の満足を辛抱強く待ち続けるのも男の甲斐性。今の私
はどんな立場であろうとも、私を相手にしてくれるだけでも在り難い。
だが、そんな男心も、長くジリジリする待ち時間も「お待たせ〜」の一言で
簡単に済まされてしまう事も承知している。

事務所に着くと、「先に入るから」などと、せっかく念入りにしたメイク
も落としてしまい、かってに布団に潜り込んでしまった彼女。
つい最近まであれだけ警戒していたのに、事務所にも随分慣れてきたようだ。

「ブログを書き終わったら風呂に入って寝るから待ってなよ」
私が意味深に言うと
「どういう意味よ!今日は何にもしないでよ」
などと、まだ強気な彼女だ。

もう日記を書き終わる、この後どうなるか、どうしようか計画はない。
そのまま寝付いてしまっても友達同士なら当たり前だ。
さて、風呂に入ってこよう。
清い体になって布団に入ってから、後の事は考えよう。

89285(154) 1月11日  PM11時15分