交差点

昨日の夜日記を書き終わりシャワーに入り終わると、夏美の寝ている一組
しかない布団にもぐり込んだ。
布団といっても、毛布を2枚敷いただけの簡易的なモノで敷布団はない。
この時期は硬い床が底冷えするので、電気カーペットを毛布の下に敷いて
いるが、それでも寒い。
そこに羽毛布団を一枚だけ上にかけているので、体を寄せ合わないと寒さ
が布団に入ってきてしまう。
ベッドか、布団をもう一組買えばいいのだが、そうしてしまえば体を寄せ
合う理由もなくなってしまうのでこうしている。
更にそれには理由があり、「お客を招いて泊める準備などない処へ、不意
に宿泊した貴女を風邪ひかないように温めてやるんだぜ」という心理的
作戦のつもりでもある。(冬季限定ではあるが)

想像通り夏美はまだ寝ていなかった。
腕枕をしたり、、およそお友達関係とは思えぬ逸脱した行為でじゃれ合っ
ていた。
二人とも酒が入っていたが、その辺は充分理解しており
「おかしいよね、こんな事。」などとお互い言い合っているのだ。
私は甘えてみたり、おどけてみたり、逆に脅してみたり、夏美だってそう。
どちらかが眠りかけ無言になってくると、もう片方がちょっかいを出し、
怒ったフリをしながら戯れ、そんな事を2時間ばかりしていたら、そのう
ち二人とも寝入ってしまった。

明け方の、気だるい朦朧とした意識の中での人の温もりはエロチック。
前回もそうだったが、今回も大人の関係を交えたのは朝だった。
彼女の方はどうだったか分からないが、私は相変わらずイクことはなく、
肉棒を包み込まれる感覚と、胸や陰部の柔らかい中にコリコリとした部位
を堪能する程度ではあった、それでも「一つになった感」で満たされていた。


二人でシャワーに入り、先ほど彼女を駅まで送って行った。
帰り際彼女はまた「私は彼氏がいるのに、こんな事をされちゃった」みたい
な事を言っていた。
次回の約束も特にはしていない、二人の関係はすこぶる微妙なのだ。
恋人ではなく、セフレでもなく、ただのお友達でも・・ない?のだろう。
一方的ではあるが、私は彼女に恋心を抱いている。
それが強い感情にならにうちに軌道修正をするべきなのであろう、その事は
頭では分かっているが、会いたいと思うし体も仕事以上に反応する。
彼女は好きな男がいるらしく、通称「彼氏」なのだが、その彼氏にはあまり
相手にされておらず関係も深いとは思えない。
その寂しさから私と会っているのだろうか?
もし彼女が本気で付き合ってくれるなら、私は今の仕事を辞めてもいいと思
っているし、そう思わせる女は今まで彼女以外にいなかった。
逆に彼女は私の仕事を否定しないし、この仕事だって世の中には必要とされ
ているし、誰にでもは出来ない仕事なのだから、選ばれた者として全うすべ
きなのだと言う。
皮肉なもんだ、その言葉は最初に彼女と仕事をした時に私が言った受け売り。
彼女は言う、「もっといい子と出会えるよ」と。

彼女が医者の娘で利発だからか?実家の敷地が一片100mもあるような資
産家の長女だからか?シャネルの匂いや装飾品が素敵に似合う女性だからか?
世間知らずなところが可愛いからか?お嬢様っぽい気品があって、押しに
弱くて私に付き合ってくれる女だからか?
何で私は彼女に恋心を抱いてしまったのだろうか?
前妻に惚れて結婚した時もそうだった、シャネラーで大酒のみで気が強くて、
浪費家で遊び好きで、男心を弄ぶのが上手で・・・
まるであの頃の前妻と夏美とは、タイプ的にそっくり同じではないか・・・
私は前妻によって、また自分の落ち度によって、奈落の底まで見てきた。
やっと穴の淵まで這い上がり、再度落っこちるかもしれない危なげな状況に
まだあるというのに、惚れた腫れたの言ってる場合ではない時期なのに。

本当に私は恋心を抱いているのだろうか?
そういう気持ちを持ってしまっていいのだろうか?
きっとこれは、人生の交差点の一つなのだろう。
そう思って冷静になるべきなのだろうか?
軽くすれ違うべきかもしれない、いつまでも後姿を見送るべきではないかも
しれない。
初めの計画通り、並走できる距離すなわち、お友達の関係でいるべきかも、
ちょっとくらい接触したって気にしないで前進すべきかもしれない。
どんな恋心の信号も標識も、心が盲目になると見えなくなる。
それが一番危険である事、それを一番注意しなきゃ、また失敗しちまうから。

89389(114)   12日  PM2時15分