記念日

撮影は無事に終了した。
夕刻にはアキが遊びに来た、今日も泊まっていくのだろう。
アキとの会話の中に引っかかる部分があるので書いておく。

アキは先日の事件を知らない、私も言ってない。
会話はアキが
「沖本さん、最近は体の調子どうですか?
 お二階の人も静かになりました?」と、聞いたところから
話は始まる。

アキも二階がうるさいと感じていた一人だし、私に気遣ってくれて
だったと思う。
私は「その話はよそう、また気になってしまうから」と、もう気に
していないような素振りで受け答えた。
そしてそのとき、一つの妙案が頭に浮かんだのだ。
これ以上アキに物音の件に触れないでいて貰うように、あの件の事
を教えてやろうかな〜と。

私 アキちゃんて、怖い話って好き?
ア え?、どんないつごろの話?どんな系?
私 つい最近の話だよ
ア 誰かから聞いた話なんですか?
私 いや、俺の体験談だよ。
ア またAV関係でしょ?
私 違うな、生活の中での話さ
  でもやっぱ止める、聞かなかった事にしといて。
ア え〜!そう言われると聞きたいな〜
私 悪い悪い、そんなに怖い話じゃないから、つまんないから。
ア な〜んだ。

私はやはり言わない方がいいと思い、あの事を言うのをやめた。
そして別のたわいもない話に切り替え、暫らくたっての事だった。
アキが大真面目で言うのである。
「沖本さんて過敏というか、神経質なところあるもんね。
 もう出会って半年以上になるけど沖本さん初めの頃怖かったもん。
 だってさ〜、沖本さんて誰もいないのに喋っているし・・・。」と。

私は意味が分からないので、それを問いただすとアキは言うのだ。
「え〜!絶対そうよ、誰もいない方向に向かって誰かと喋っていたの!
 この部屋の中で、私以外の誰かと挨拶のような、会話のような・・・。
 少なくとも私には見えない透明人間と喋っていたのよ。
 だから私、沖本さんが近づくだけでも怖かったのよ。
 この部屋、何かにとりつかれているんじゃないの〜」と。

私は半年以上前の、去年の夏ぐらいの事を思い出していた。
確か、アキが子供だった頃の話・・・白血病の話だったと思う。
その話は日記にも書いてあるし、記憶にもある、だけど私がアキ以外の
誰かと喋っていたという記憶はない。
その日はアキと二人だけだった筈だ。
だから私は、てっきりアキが私をからかっていると思い、
「そんなわけないじゃん、俺を怖がらせようと思ってるだろ?
 そうか、さっきの話の仕返しだな?」
そう私が言ってもアキは、
「覚えているかどうか聞いてみただけよ、怖がらせようなんて思って
 いるわけないじゃない。あの頃は沖本さんのこと危ない人じゃない
 かって思っていたのよ。」と、アキは否定する。

もしアキの言う事が本当ならば、私はちょっと問題ではないだろうか?
実はつい最近も思い当たる節があるのだ、これは仕事関係なのだが、
相手は私に「確かに3万円あげた、手帳にもつけてる」と主張するのだ
が、私は3万円を貰った記憶がまったくないのだ。
その以前には、実家に帰る時の電車で、駅を一つ乗り過ごしている事が
ある。居眠りとかではない、考え事はしていたがホームに降り立つまで
駅を乗り越した事に気が付かないなんて事はありえるのだろうか?人の
乗り降りも多いし車内放送だってある、外の景色だって違う筈だ。

という事は私が気付かぬだけで、私はそういう事をしょっちゅうやって
いるのではないか?
私の記憶にない時、私の別の人格者に支配されているのか?
「一体何なんだ?何がどうなってんだ?!」って感じ。

自殺者も「そういう状態だからできる」場合が多いと聞く。
まともなら、高いビルや電車に飛び込むなんて出来やしない。
つまり私も「そういう状態」に、時々陥っているという事か?
私の別の人格者は自殺願望があるのか?
まったくとんでもない話だ!
「冗談じゃないぞ、俺を勝手に殺すな、俺はこれでも生きてるんだ!!」
そう言いたいね。
ただの偶然ならいいのだが・・・ちょっと・・問題?なのかな。

自分の事だけど、ちょっと今日は久々にキモの冷える日だった。
これを、どう処理すればいいのか?
とりあえず「疑問気が付き記念日」と言う事にしておこう。

110217(154) 20日 PM11時45分