第六単元

最終単元の答案を投函する。

今のとこと特になし、大忠臣蔵と映画番組を観ていたら
いつの間にか夕方。
あと1時間もすれば日の暮れる時間。

明日も気のすすまない撮影がある、さっき担当者から連絡が
あり「明日の予定ですが、昼からではなく朝一でいいですか?」
などと時間の変更をしてきた。
どうせ気のすすまない仕事なら、早く終わらせたいので助かる。
ここのメーカーのチョイスするモデルは、若い美形の新人ばかり
をつれて来る。聞けば名前を売り出す前の将来有名女優になるか
もしれない子を、初々しいうちに私の作品に出演させておこうと
いう事らしい。
どの子もそれぞれの事務所の社長が、自ら単体営業をかけてい
るような子なのでレベルは高い。
見かけはいいのだが、内容的にはまるっきり演技で、ビンタの
一つも陰毛の一本も抜けないようだから面白くない。
鬼畜だろうと、優しい作風だろうと、どんな作風だろうと、その
時にみせる一瞬のリアクションや自然体なやり取りを期待する私
にしてみれば打ち合わせし過ぎた反応はくだらん芝居でしかない。

こんな気持で仕事をしても良い作品はできない。
そのメーカーさんにも悪いから、様子をみながら断ろうと思って
いる。
金曜日に別のメーカーと会うことになっているので、そことの話
次第では今後の活動を本気で決断しようと考えている。
例のフェチのメーカーからも打ち合わせをしたいと言ってきている。
このようにズルズルと生きて行こうと思えばそれも可能だが、や
がてはどのメーカーも取引しなくなってしまうのだろう。

一時は食いつくメディアも、飽きると波が引くように・・・
制作側は新しいモノを求められ、古いモノは使い捨てられる。
それは世の中の常であり、私もそういう存在であると承知してる。
つまりは根を張れぬなら、せめて果実(金)だけでもと思ってしま
うような薄情極まりない本質がこのような業界にはある。
私はそれについて文句を言えたような義理もない、むしろこの何年
この業界で生活させて貰った事に感謝さえしている。
要はこの業界の住人である以上、それは宿命でありそれが嫌なら
この連鎖から抜け出せばいいだけの話だ。
第六単元の答案が帰ってきたら、ゆっくりと考えてみることにする。
ここ何年そんな事ばかりを考えながら、そしていつも変わらぬ正月を
毎年迎えてしまう。
若い頃はこんなじゃなかったな、私の方からどんどん切り捨てていた。
「慎重に」もいいが、決断が鈍いと言われりゃそれまでだ。
私もずいぶん・・・・臆病になったもんだ・・・・と思う。

82813(151)   11日  PM4時15分