誓い

新宿伊勢丹会館にある歌行燈という店で会長に懐石料理をご馳走になる。
「うどんでも食いに行くか」と言われて着いていった、旨かった。
会長は私を可愛がってくれる、私も親父のように慕っている。会長の話は面
白い、どんなドラマや本よりも面白いし様々な有名人が登場しその裏話を聞
くと世の中というものが分かって参考になる。もし会長が自分史なるものを
書けばベストセラーは間違いないだろう、あらゆる分野を広く知り道理を尽
くしてきた会長の武勇伝は、たぶんどんな人のそれよりも勝るだろう。しか
もそれが全て会長がらみの実話なのだから驚く他はない。
「何で会長はご自分の本を書かないのですか?」との問いにも、「俺が書いて
しまえば困る奴も出てくるだろう、お前なら喋ったところで影響もない」と、
このように知る人の気配りをなさる方なのだ。さらに私の知る限り、会長の
知り合いに会長を嫌う人は一人もいない、どんな職業の人でも会長を慕い尊
敬し連日多数の人が相談に来ている。言うなれば「昭和の番長」みたいな人
なのだ。どんな問題でも相談できる心強い人、誰にでも自信をもって紹介で
きる人そういう人に自分の親以外で何人の人と出会えるだろうか?親にさえ
相談できない事は多々あるものだ。私はこういう人に出会えてラッキーだった
と思っている。会長は私の命の恩人でもある、私が過去に犯罪的な撮影を行っ
ていた頃私は毎日怯えていた。いつ被害届が出され警察が踏み込んで来るかと
朝の9時のピンポ〜ンに怯えていた、当時大量の薬を服用し尋常でなかった私
は警察が来る前に切腹しようとか、踏み込んで来たら着ている衣類にガソリン
を被って抱きつき刺し違えてやろうなどと本気で考えていた、それを固定カメ
ラで一部始終を撮影して最期の作品にしようと考えていた、それほど怯えてい
たのだ。
その決意を遺書に書き会長に相談に行った時、「寂しい事を言うな、残された
者の悲しさも考えろ馬鹿者!そんな撮影は今後一切するな、お前は今日からす
ぐにヤラセの作品を作れ、そうすれば本物とニセモノの見分けがつかなくなり
捕まらない可能性は出てくるぞ、その可能性に賭けてみろ」と、諭された。私
はそれを忠実に実行し、今も生きているという訳だ。
会長は今日も「どうなんだ次の仕事は?商売がえしたいと言っていただろう理
由など考えていると時期を逸して遅れをとるぞ」と。
一週間前にお世話になっている人からも「業界をウロウロしているようじゃダ
メだよね、行動を起こさないとさ、そうだろ沖ちゃん」と、言われたばかりだ。
このお二方の成功者の言葉を私は胸に深くしまっている。
“見てて下さい、きっと必ず!” 今はここにしか書けない情けない私ですが
心の中では誓っております。

33035(120)          15日AM1時15分