下水の藻屑

AM3時、歌舞伎町のフィリピンクラブから帰って来た。
彼女達の接客は、日本のキャバクラとは違い大いに癒されるものだ。
営業トークだとは重々分かっているが、その気になってしまう。
故郷の貧困な家族の家系を助ける為に、日本にまで出稼ぎに来ている
彼女達だが、その表情に暗い影など微塵も感じられない。日本の水商
売に勤める殆どのホステスは、給料をブランド品やホストクラブなど
自分の満足の為の収入と考えているのに対し、フィリピンクラブの女
たちは、故郷への仕送りが主な目的である。映画「野麦峠」で描かれ
いるような純粋なけな気さが彼女達にはあるのだ。
その純粋な気持ちに触れたくて、店に通う日本人は多い。ブランド品
を見せびらかしてステータスな気分に浸り、店の女を口説き落とそう
と足繁く通い、下衆な心に蹂躙されている客もそうはいないのが特徴
だろう。
私は過去、一年間ほぼ毎日フィリピンクラブへ通った経験がある。
それは地方の店だったが、そこの客層は8割がヤクザ関係の客だった
。それに対し歌舞伎町であるにもかかわらず、東京のフィリピン店は
ヤクザ関係に見える客が殆ど見当たらないのもいい点である。
水商売全般にいえる事であるが、いくらその店でモテようと実際には
自分がモテているのではない、金がモテているのだ。ホストクラブで
働く男も何人か知っているが、皆口を揃えて「どれがいい女なのか
分からなくなる、金を使ってくれる女がいい女に見えてくる」と言う
。確かに夢を売る商売であるから、その理屈も一理あるがどんなに高
価な酒を浴びるように飲もうと、翌日には小便として下水の藻屑と消
える虚栄なのだ。私にはまったくの無駄にしか思えない。
会計で支払った金が、故郷の大家族の生活費や、彼女たちの兄弟の学
費になってくれるだろうと思うとこが、せめてもの救いである。
フィリピンの法律には妙な規制もあるそうだ、女性は比較的就労ビザ
が発行されるのに対し、男性にはなかなか困難だそうだ。
フィリピン人は女性ばかりが働いているというイメージが日本では強
いが、そういったお国事情もあるそうだ。日本で働きたいと思ってい
るフィリピン男性は、女性以上にいる筈であると想像できる。

49648(250)26〜28日      AM7時25分