澄んだ気持ちで

今日は比較的暖かい、この季節は空気が澄んでいて今日の様に晴れた日は
とても気持ちが良い。インディアンサマーと言うのだろう、小春日和と寒
日を何度か繰り返し、やがてはそのサイクルが短くなり、三寒四温となり
季節は春へとなってゆく。
「救われぬ子」が、またまたやって来た。「来たな妖怪!」と、陽気に声
を掛けると、ユキコは照れくさそうに笑っていた。
「お前は救われない子である自覚を持ちなさい、俺にも限界がある、俺の
 言葉や暴力は、一時的にお前を抑制する力はあるだろうが、所詮医者で
 もない俺に、お前を治してやれる事は出来ないんだ、それは宗教も、医
 者の薬も同じ事だ、効力はないんだ 誰もできないのだ、可能性がある
 とすればユキコよ、お前自信が「救われたい」と強く思い、自分と戦う
 しかないんだ、その為の助言ならしてやれる。 仕事も先ずはコンビニ
 あたりから面接行ったらどうだろう? 3回落ちたぐらいで泣いててど
 うする、5回でも10回でも面接に行って来い、どうしても昼間に雇っ
 て貰えないようなら、その時は裸の仕事も紹介してやる、但しその仕事
 をしながらも昼間の仕事を探すんだよ、それが出来るのならここに住め
 ばいい、贅沢な買い物は出来ないかもしれないが、3度の飯と布団もあ
 る 人並みの生活をするくらいの協力はしてやるぞ、どうだ?」
私がそう言うと、ユキコはカッパみたいな顔で、「私が悪うございました
沖本先生(パパから先生になっている)こんな私ですが、宜しくお願いい
たします。」と、正座してかしこまっていた。私を「先生」と呼ぶ事で、
やっと私が「恋人やパパ」でない事に気付いてくれた彼女の進歩を嬉しく
感じる。
今ユキは、「行って参ります!」と、勇んでコンビニへバイトの申し入れ
をしに行っているが、結果はどうなるか分らない。そして今でこそ、彼女
の姿勢も正しいが、いつ病気が発症してしまうかそれも分らない。彼女が
ウチを飛び出す度に、「もうこれが最期だぞ」と、殺し文句を言う私だが
、彼女に「もう一度私を」と、頼まれると断り切れない私なのだ。
やはり彼女と関わってしまった以上、長丁場となるのだろう、疲れる女だ
が、マリン(去年の夏にいた子)よりは、マシかもしれない。
                         PM5時ジャスト