就寝前

私は今心が揺れている、この商売をしていて今は人並み以上の収入を得てい
ても将来的にはどうなるか分からない、分かっているのはよっぽどの強運に
恵まれない限り「老兵は去る」ってことになり、みじめな人生の終盤戦を送
ることになるのは必至だ。私たち裸の仕事をしている者は、体が動くうちし
か利用価値もなく、そうなるまでこの仕事をしたからといって誰が褒めてく
れようか?私たちには退職金さえないのだ。
「では早くこの商売をやめて別の仕事をすればいい」と、おっしゃる方がい
るとすれば私もその方に質問をしたい「特筆する技術ナシ、パソコンもブロ
グしかできない、おまけに前科3犯、一番ながくやっていた職業はAV関係
だけなんて中年男(腰痛もち)そんな奴をまともな待遇で雇ってくれるカタ
ギな会社がこの不景気の時代にあるというのか?」たぶんないだろう。
もしそんな会社があるというなら、私は死にもの狂いで会社のために働くだ
ろう、必至で働いて汗にまみれて、そして気づくのだ こんなに働いている
のに貯金が増えないぞ逆に減ってるじゃないかって。当然の理屈ではあるが
、まともな会社で一生懸命働いたところで今の仕事の収入には到底追いつく
はずはないのだ、だけど普通の人が毎日働いていた時にこちらは寝ていたの
だから2倍3倍働いても普通の人に追いつかないというものだ。つまり今の
仕事をやめ生活水準を落とさずまともな人になりたいなら、5年や10年寝
てても平気なぐらいの貯金がなければ将来は生活もできなくなるという事だ。
この現実を我々業界人は感じている、そして迫り来る年齢という恐怖に日々
怯え将来の不安を抱えながらも服を脱いでいるのだ。
私とジュンは将来の話をよくする、先日もあと一年で5000万貯めようそ
して業界を引退して普通に過ごそうと。5000万という数字は不可能に近
いが可能でもある、強運に恵まれれば数ヶ月でそれ以上だ、実際に私がモデル
プロダクションをやっていた頃の一ヶ月の最高売り上げは2100万だった。
そんな話をしながら「お互い仕事に口出しするのはやめて少しでも金を貯め
よう、どんな仕事だろうとやろう、お互い体は裏切るだろうが心だけは裏切
らないようにしよう、協力をして邪魔はすまい」そう約束をした。
昨日も銀行に振込みを確認したら62万が振り込まれていた。「たまには旨い
ものでも食うか?」と聞くと「アンタの悪い癖、貯金しなさい」と言われた。
ジュンの質素な言葉にこんな女には苦労かけたくないものだと思ったものだ、
この子が協力してくれるのは嬉しいが、協力とはつまり、彼女にもそういう
仕事を公認でさせるという事だ。公認といっても仕事内容までは聞きたくない
どんな仕事であろうと一年間は黙って我慢し合おうと、どんな仕事でも・・。
そう覚悟を決めていたが、今日ジュンの口から思いがけない言葉が。
「AVの面接受てきちゃった、面接行っただけで5万円もらったよ。その事務
所は力があるから私、企画単体か熟女単体で一本50万円のギャラだって、月
に10回くらい仕事あるらしいから・・・」
それを聞いた私は思わず「そりゃないだろう!お前が風俗もAVも嫌だって言
うから俺は仕事をやらせなかったんだ、この半年そうだろう!AVやるなら何
故俺に営業させない?俺だって自分の入れた仕事なら納得して彼女のお前をA
Vに働かせることが出来るんだ。なんで他の事務所にお前を取られなくちゃい
けないんだ?商売敵みたいな真似しやがってこのヤロウ!!」
私がまくしたてると、「面接行くだけで5万円だよ!アンタに単体営業できる
の?私を営業できるの?毎日昼まで寝ているくせに!」と、ジュン。
確かにそうだ、ジュンと出会ってからの私は怠け者そのものだった、仕事をそ
んなにしなくても食っていけるならジュンと平和に戯れていたかった。それに
ジュンの言っていることに嘘がなければ、その事務所は単体事務所といわれる
事務所であり私にはそんな力はない。私は悔しいやら腹立たしいやら、よっぽ
どジュンの前歯を2,3本折って仕事ができないようにしてやろうかとも思っ
た。だがぐっと堪え、「悔しいが今回は俺の負けだ、俺にはそんなルートもない
し力もない、その事務所で稼がせてもらって貯金をするならそれもいいだろう
、たまには俺も優位に展開せずに下手にまわって事の顛末をみてみよう、今回
俺は出し抜かれたが、これも修業だ試練と思って我慢してやる。この際だから
協力もさせてくれ、俺は一応この世界で食ってきた人間だからその事務所が本
当にいい事務所なのか社長と話せばすぐ分かる、社長に挨拶させてくれ、お前
が有利なように取り計らってやる。」
そう言うと私は、ジュンがこれから世話になる事務所の社長にメールを打たせ
覚悟をきめた。
<私はフテ寝をし、目が覚めればこの悪夢も覚めて欲しいと思った>
                      PM6時
昨日(12月13日)のブログは、上記の一節で終わる筈だった。
ジュンがメールをし、相手がそつのない対応さえしていれば私は社長と会い
「ジュンをお願いします」と、万事上手くおさまり明日はムーディーズ(日本最
大のAVメーカーその売り上げは石川県全体の企業でも第二位の売り上げを
誇る)へ面接へ行っていた筈だった。
ところが、先方の社長は何を思ったのかジュンへ返信をしてこなかった。
そこで私は「ジュンよ、おかしくないか?もしお前が現場でトラブッてメール
したとしようか、そのとき返信がなかったらどうする?この状況がそうだろ?
お前を守ってくれると思うか?こんな対応の悪い事務所にお前を預ける気には
なれないなー、お前自身の問題だぞどうする?」と。
暫らくして相手の社長からジュンにTELがかかってきたが、電話を代わった
私はこう切り出した「沖本と申します」当然相手は自分がジュンの彼氏である
ことも先刻承知である、「○○と申します」と返すのが通常ではないだろうか?
ところが先方は「何の用件です?私は契約者であるジュンさんとお話したいん
ですが」と、あまりにも無礼な発言だった。
私はここでキレた。「何っ?!ジュンはまだ契約してねぇだろうが!お前のや
ってる事は違法なんだよ!!なんなら警察の生活安全課の人間に話しさせよう
か?お前ら商売できねぇようにしたろうかっ!縁が無かったと思えや!」
私はよく自分の撮影でモデルたちに言われている内容の言葉をぶつけてやっ
ただけだ、私たち業界人にとって一番キツイ言葉と分かっているからね。
こうなったら単体事務所もクソもない、口喧嘩も先手必勝というものだ。
相手は「落ち着いて下さい、話を聞いてください」と言っていたが、「お前と
話すことはもうない」と、ジュンに電話を代わりそのまま仕事を断らせた。
ジュンも素直に断った、今にして思えばジュンも貯金より私に止めて欲しかっ
たのかもしれない、そうでなければ私に黙ってAVの面接に行ったことを私に
喋るはずもない。私も今回のことで自分の彼女をAVで働かすという事の苦悩
を身をもって体験した、頭ではわかっていても実際には知らない相手に彼女を
任せるなど私には無理だった。私は何が何でもこの仕事を否定するのではない
明日スカウトマンが、私の元へどこかの女を連れてくるかもしれない、それは
それで仕事として割り切るしか生きてゆく術はないのだ。つまり私はこんなに
も自分勝手で、業の深い男だということだ。

今日のことがあったからだろうか、ジュンはもう布団に入って寝ている。
ジュンが先に寝ようとしていたので「今日は抱かれたくないのか?」と聞くと
「眠いから早く終わらせて」と答えた。早く終わらせてとはSEXの事ではな
い、このブログのことだ。私が「今日は長文になるから先に寝ていな、ズボン
は脱いでなよ寝てるままヤッてやるからよ。ところで「ネフェラ」はいつやっ
てくれるの?フェラされながら目覚めたいんだけど一度も経験ないんだなー」
と言うと、ジュンは小さく「ムリ」と言いそのまま寝入ってしまった。もう2
時間もまえになる、私もそろそろ眠い。布団に入って、ついでにジュンの中に
も入って腰の運動をしてから休むことにしよう。

24847(314) 11日〜14日    AM4時5分