入魂

私は朝シャワーに入る習慣がある、独り身の私はシャワー
のついでに下着類も洗濯して、風呂上りにベランダに干す。
今日はバスタオルも3枚洗濯したが、人間の血はなかなか
汚れが落ちづらいものだ、昨日のうちに洗っとけばよかっ
た。ベランダへは全裸で出るので全身で季節の温度差を感
じる、最近は肌寒い。
昨日テレビが壊れてしまった、撮影前に過去の私の作品を
見せて出演者としての自覚を持たせる為にテレビを見せな
がら作品の意向を説明してやるのだ、けして怖がらせる事
が目的ではなく、むしろ親切のつもりなのだが途中で「止
めて」という女が多い、中には便所へ行くフリをして逃げ
ようとする女までいるから私も最近では用心してドアの近
くにいるようにしている。昨日の女も、やけに警戒心が強
い奴だった「本当はウソですよね?こんな内容じゃないで
すよね?」と、しきりに質問してくるのだ、私の作品はそ
ういった本当のリアクションこそ重要であるので「テレビ
を見とけ!くだらん質問などするんじゃねえ!!」と一喝
してテレビを蹴ったら画面が映らなくなってしまったとい
うわけだ。蹴ったぐらいで壊れるテレビだからどうせ安物
なのだが、もしかしたら蹴った瞬間に念が入ったのかもし
れないと思っている。
そんな理由で作品鑑賞ができなくなってしまい、そのまま
念を入れた撮影をしてやった、おかげで昨日の子は最高の
演技をしてくれた 嫌がるシーンも痛がるシーンも絶妙!
おまけに気絶するシーンまで演出してくれた、涙こそ出な
かったが本当の恐怖は涙など流す暇などないものだから、
あれも迫真の演技といえるのではないだろうか。やはり良
い作品とは、出演者の迫真の演技があってこそ成せるもの
だと思った、テレビは壊れてしまったがいい仕事ができた
ことに満足している。