鈴の件

出かける際、手荷物はなるべく手に持ちたくないと思っている。
両手を開けておきたいからです。
手が塞がっていると不便というのもありますが、大きな理由と
しましてはイザって時に、思うような反応ができないだろうと
考えているからです。
ではイザって時はどういう時なのか。
それは自分の身を護りたいと思うような時。
目の前に危険を感じるような、例えば刃物、銃をもってような
人が現れるような時。

なんと臆病なと思われるかもしれませんが、こういった防衛本能
は誰でもがもってるものですし、武道をかなりやっていた人や、
それなりの危険な状況に多く直面した事のある人なら、当たり前
に備わっているものです。
臆病と言わず、用心深いと捉えて頂ければと思います。

何事もなく無事にやり過ごせれば、それに越した事はないですが、
もし身体に危険が及ぶ事柄であるなら、片腕を犠牲にしてでも、も
う片方の腕で逆襲をしたいと考えるからなのです。

そんな身に染み付いてしまっている用心深さも、普通に生活してい
るだけなら杞憂なのでしょうが。
そんな訳で、私も両手が塞がるのが嫌なので、よくリュックを用い
てます。
そのリュックは、どこで買ったかも覚えてないほどの安物なのですが、
荷物の多い日は重宝しています。

えーと、リュックについてのお話はこのくらいにしておきます。
ついつい余談ばかりになる傾向がありますが、そこはお許しを。
今日書いておきたかったのは、そのリュックに付けてある鈴の音
の出来事です。

リュックの横には母からもらったお守りをぶら下げてます。
母が中国地方を旅行した折のお土産で「松蔭神社」のお守りです。
そのお守りに付いている鈴の音が、メイの首輪の鈴の音と、とても
よく似ているのです。

昨日用事があり、友人にある荷物を届ける事になりました。
その荷物をリュックに入れて持ち運び、届けたのです。
荷を渡し終わり空のリュックを持ち帰り、リュックを寝室のベットの
少し離れた脇に置いて昨日は寝ました。

今日目覚めた直後の事でした。
「チリン、チリン」と、メイの首輪の鈴が鳴るのが聞こえました。
「ああ、メイが帰ってきたのか」と、私は思いました。
その時は何の疑問もなく、ごく当たり前にそう思いました。
そして直ぐに「えっ?!」と思うわけです。
そうなのです、もうメイが鈴を鳴らすなんてある筈もなく、昨日
置いたリュックが、何かの拍子に動いてお守りの鈴が鳴ったのです。

でも何かの拍子って何でしょう?
私が寝ていたベットからリュックまでは1mくらい離れてますし、
よりによって私が目覚めた瞬間に鈴が鳴るってのも偶然です。
そしてその鈴の音によって、私は寝ぼけてはいましたが、あたかも
メイが傍にいたような感覚になれました。

ですから、私はメイを忘れようと努力はしてますが、まだ心の中
にメイは生きているんだなと、思ったのです。
時々身の回りに起こる奇妙な偶然、今回は別段にどうって事も無い
事ですが、私にとっては書き残しておきたいお話でした。

276181 (119) H24 11月10日  PM10時35分