コントロールケーブルの森 3

森の中には様々な種類の樹木が雑然と生えていた。
上級の子が
「この幹にシワのような模様がある木、クヌギって言うんだけどな」
と、言うや否やその木を足で蹴飛ばした。
皆も真似をして蹴飛ばした。
何回か木を蹴飛ばす動作を繰り返したが何事も起きなかった。
「こうやって蹴飛ばすと、クワガタかカブトムシが落ちてくるんだ」
その上級生は盛んに木を蹴りまくっていたが、虫らしい物体は一つも
落ちてくることなく、たまに枯葉や小枝がパラリと舞い落ちただけだった。

「時間が遅いのかもしれない」
別の上級生がそう言って、クヌギの木の根元を掘り始めた。
クワガタが眠るのは木の根元だそうだ。
私たちも見よう見真似で、落ちている棒を使って掘った。
よく見るとクヌギの木でない木の根元も、同じように土を掘り返した跡があ
った。
たぶん何年も前から子供たちは同じような事をやってきたのだろう。

一時間ちかく同じような事をやっていたが、子供たちは飽きてしまった。
その時、誰かが
「あの木の上にいる!!」と、叫んだ。

一同はその木の下にぐるりと集まり、はるか上の方にいる甲虫
(カブトムシではなかったと思う)
を眺めていた。
その木は太く、蹴ったぐらいではビクともしない。
上級の子のリーダー格だった子が、
「俺が登る」
と言い出し、さっそく木に飛びつき登り始めた。

159234   H22 3月11日 PM4時30分