コントロールケーブルの森 2

その森への入り口は、工場の横にある畑の中の一本道の突き当たりである。
入り口には大きな柳の木がそびえ立っており、早朝薄暗い中でボヤ〜と見えるその木は
まるで妖怪屋敷の入り口の番人のようで薄気味悪かった。
入り口といっても当時の子供たちが勝手に出入りしていた場所であり、ちょとした崖に
なっており剥き出しになった木の根をつたって森へ下りてゆくのだった。
どこかでヘンな生き物の泣き声がして怖かったので
「あの声は何?」と訊ねると
「あれはハトの声だよ」と、上級の子供が教えてくれた。そしてやはり上級の誰かが
「この森ってイロキチガイが出るんだぜ」って言っていた。
イロキチガイ?私は聞いたことのない単語に漠然と想像していた、体中に原色の絵の具
を塗ったような、カラフルなピエロみたいなオジサンなのかな〜と。

158349(156) H22 3月3日 PM11時55分