野生の掟

アロワナの水槽で権力争いが繰りひろげられている。
三匹とも並みのシルバーアロワナ、購入した「嘘つき熱帯魚屋」によ
ると、すべてワイルドもの(野生で生きていた)だそうだ。
そう言われて良く見ると微妙に大きさ、色合い、性格まで違うので
それぞれに名前を付けてやった。
一番大きいのが、「銀二」こいつは獰猛で餌も良く食べる。
同じくらいのが、「タンゲ」 片目が潰れている。
少し小さいのが、「レット」 えらの部分に赤い線がある、レッドでは
芸がないのでレット・バトラーのレットから命名した。
元々、2匹だけ購入しようとしてら、「2匹だけではケンカしますよ」
と言われたので3匹購入したのだが、小さなレットが他の2匹に虐め
られて餌も食べなくなってしまい今では他の2匹と比べるとレットだ
け、頭一つ分も大きさに差がついてしまい別の水槽に移した。
銀二とタンゲは、仲良く泳いでいたしケンカもしないし餌も良く食べ
るので、どんどん大きくなり、今では金魚も食べれるようになった。
「2匹ではケンカしますよ」なんて嘘を教えやがって、私に3匹買わ
せたかったんだな熱帯魚屋のオヤジめ!と、昨日まで思っていたのだ
が、今日になってやけに水槽の中が濁り、餌の時間でもないのに魚が
跳ね回る音がする。観察していると仲の良かった銀二がタンゲを追ま
わし、噛み付いたりしている。跳ね回る音は、タンゲが逃げ回る音だ
った。もっと良く見ると、剥がれ落ちたウロコが何枚も落ちており、
タンゲが体中に傷を負っているではないか!
どうしようかと、暫く様子を見ていたがタンゲは抵抗すらしない、か
といってレットを入れて3匹にするのも気が引ける。銀二は執拗に噛
み付き獰猛な性格を顕にしている、タンゲが死ぬまでやるつもりだろ
うか?タンゲを別に移してやりたいが、もう他に水槽はない。
水槽内とはいえ自然界は残酷だ、私はそんな場面をだまって見てられ
ない。そこで銀二に制裁を加えることにした、魚を掬う網で銀二を突
いて追い回してやった。驚いた銀二は水槽中を逃げ回っていた、そし
て網が見えるように置いた。条件反射の性質を利用したのだ、自分を
追い回す網があっては、タンゲを虐めるどころではないだろうと、考
えたのだ。作戦は功を奏し2匹とも元の様に仲良く泳いでいる。
明日以降、問題が生じるようであればレットを「嘘つき屋」に引き取
ってもらい銀二とタンゲを別の水槽で飼育しようと思う。
条件にもよるのだろうが、アロワナのような大型になる魚は一つの水
槽に1匹だけで飼うのが好い事が分った、もっとよく勉強してから購
入するべきだった。
アロワナ・・・熱帯淡水性の古代魚 肉食性 数種類あり、値段も
様々。大きなものでは100万円以上するものもある。バブルの頃
人気があり、近年徐々に人気が回復している。 種類にもよるが、
幼魚のうちは数千円から取引されるが、ある程度大きくなってしま
うと、どこの問屋でも引き取り手がないそうだ。特に一般的なシル
バーアロワナは「幼魚から育てる」事に価値があるらしく、大きく
なればなるほど価値は低下するのが商売人の間では常識らしい。

46840(69)            PM4時ジャスト