目の前の家なのに

AM3時、睡眠薬を飲んだが一向に眠くならない。
考えされられてしまう事が多いからかもしれない、それとも不眠の周期に
入ってしまったのだろうか? 追加でレキソタンと、睡眠薬を飲んだが、
今度は目が冴えてしまって、何かをしたくてしかたがない。
とりあえず釣具の準備をした、これでいつでも釣りに行ける、早く晴れろ。
そうだ、何でこんなにソワソワしてるか書いておこう。
私は池袋に事務所を構えて、約5年になるが自分の住んでいる建物の住人
はおろか近所づきあいを殆どしてない、それというのもこちらが挨拶しても
シカトするような不届き者が多く、いつしか私も無視してすれ違うようにな
っているのだ。別にお互い迷惑を掛けているわけでもないし、私がここでA
Vの撮影をしているのも住人にはバレてないからどうでもいいのだが。
唯一近所で挨拶をする家は、私の建物の向かいに住んでいる老夫婦だけだ。
そこのご主人は、皐月などの鉢物をやっている、私もベランダに数鉢の植木
を置いているので、花の季節になるとお互い「丹精されてますね」などど、
声を掛け合い ちょっとした話などをしたいたからだ。
その主人が病をわずらって、去年から入院をしていた。たまたま去年の12
月ごろ、仕事帰りに家の前を歩いていたら、その老夫婦が連れ立って歩いて
来るのが目に入った。
私が挨拶すると、奥さんが「やっと一時帰宅の許可がでましたんで」と、話
掛けてきたので「それは良かったですね、退院もすぐですよ」と、会話をし
ていたら、奥さんが私に言うのだ。私のベランダにある植木を毎日観察して
は、剪定してたとか、針金を掛けていたとか、入院中のご主人に報告をして
いたそうだ。入院中は暇だから、主人は奥さんの報告を聞いてベットの中で
私の植木の事を想像していたのだろう。 私は嬉しくなって「花が咲いたら
良く見えるように置きますから、どうぞ見てやってください。それまでには
ご主人も退院なされているでしょうから」  そんな会話をかわしたのが去
年の12月だった。
私は昨日精製したギンナンを、その夫婦におすそ分けしようと、家のベルを
鳴らした。出てきた奥さんに「時期はずれだけどギンナン拾ったので食べて
下さい、ところでご主人は体の具合どのようですか?最近お見かけしません
が入院されてるんですか?」と、聞いたところ。奥さんは「もう主人は、い
ないんですよ、去年の暮れに亡くなりましたから」と言うのだ。
私はビックリした、葬式は寺でしたそうだが、ご主人が亡くなっていた事さ
え近所の私は、2ヶ月も経過した今日まで知らなかったのだ。 何ともいえ
ないショックと、寂しさを感じた。
東京の近所付き合いなんてものは、所詮こんなものなのだろうか。大都会の
暮らしの中で、大事なものを見失っているのは、若者ばかりではないようで
ある。私もここを引っ越したい気分になった。
44547                   AM3時55分