祖父

祖父

30年も前に亡くなった祖父と久しぶりに夢で会った。

祖父は階段から降りてきて一階をヨボヨボと歩いていた。
階段をドタドタと誰かが降りてくる音に「誰だ?」と思ったら一階をヨボヨボ歩いている祖父だったので不思議に思った。

私は祖父の後ろに付き添うように、また祖父の肩を抱きかかえるようにした。
そのとき何かを喋ったような記憶があるが内容は思い出せない。
人は亡くなると、その記憶のように忘却してゆくから不思議なものだ。
夢の中だけが当時の現実感を甦らせてくれるのに、そのときは有り難いとか懐かしいなんて感情が湧かないのは何故だろう?

それはきっと人は勝手な生き物だからだと思う。
自分自身それはよく思う、この文章や物語にしても俺はいつまで沖本を演じ続けてるんだ?早く分離してつまらなくてもいいから実直な真実だけを書けば?という声が囁く。

かといって気分なときは沖本になりきって、それ以上の悪辣な醜態を晒してストレス発散しよう!なんてときもある。

まったく勝手なもんですよね。

祖父も生前日記を書いていた。
国鉄職員として真面目一本で貫き通した祖父の日記はまったくつまらない記録書のようなものだったが、実直な性格や素直な感情がそこには刻まれていた。

そんな生き方をしたい。
今度夢であったなら、正面から眼をみて泣けるような孫でありたい。