勝手に言葉が

体が妙に芯から冷えて、早朝に目が覚めた。
頭は起きているのに夢の続きを見ているような変な気分だった。コツコツと
上の階に住む住人が階段を下りてくるハイヒールの音がやけに鮮明だ。まだ
7時前だというのに、こんなに早くからご出勤とはご苦労なことだ。
2月の朝はさすがに寒い、「いと寒い冬は炭をおこして」なんとやら・・昔
習った勉強にそんなんのがあったっけ、私は横で小さな寝息を立てているジ
ュンをグッと抱き寄せればそれで事足りる、冬の朝はそれが一番暖かい。遮
光カーテンの隙間から光が漏れている、晴れているんだろう散歩でもすれば
気持ちがいいかもしれない。
何時間たったのだろうか、抱き寄せていたジュンが少し目を覚ましたようだ。
私に抱きつき脚をからめ私の胸に顔を埋めて甘えてくる、こいつは猫みたい
な奴なんだ。普段はすまして無愛想なくせに・・・・寂しがりやのくせに上
手に甘えることが不器用な女。
ジュンが何か言っている、私は耳栓をしているので何を言っているのか聞き
取れない。耳栓を外して「何時?」と聞くと「8時前・・」と、答えた。
エアコンのスイッチを入れると、やっと朝らしい音で今日が動き出した。
頭が働きだすと、もう私はさっきまでの静かな心ではいられない。仕事の事
将来の事を考えると止まらなくなる。私は自分に誓いをたてて発奮する習慣
をもっている、便所にいけば「何故その道を行くのか?それはお前だけが知
っている、そこには夢があるからだ。沖本」なんてちょっとキザな走り書き
が貼ってあったりする。笑ってしまうが時々そんな語調の言葉が頭に浮かぶ
事がよくあるから忘れないうちに書いておくのだ。今朝も一つ浮かんだので
書いておこう(本当は恥ずかしいけどね)。
「自責の念に駆られながらも、お前は進め 成してこそ在る存在なのだ」
何のこっちゃ!何か意味があるのだろう、散歩して考えよう。

31675(58)           AM9時50分