ある男の詩

ある男の詩

残暑が夏の猛りを思い出させるが
風はもう秋の風。

あの狂ったような酷暑ではなく、どこからかキンモクセイの香りがする。

栗のイガも少しずつ色づき始め、早熟なものは弾けているのもある。

今年もこの季節がきてしまった。

私は秋が嫌いだ、私の持病である謎の息が出来なくなる発作はこの時期が一番多いからだ。
私の死因はきっと持病の呼吸困難による窒息死ではないかと思っている。
それが今度いつ起こるか分からないが、経験からこの時期が多いとなると、葉の色づきや虫の声は私にとり忍び寄るカウントダウンでしかないのだ。

まだまだやりたいこと、やらなくてはならないこと、沢山ある。
だから私は秋を堪能したりはできない、そういった素振りはするが本心はどこかで願っているのだ。

秋なんかにではない、自分の運命に願っているのだ。
このままくすぶった生活ではなく、返り咲きもう一花も二花も咲かせるまでは生かせておけと。