男同士

前妻からTELがあった、内容は子育てについての悩みだった。
「子供を育てる自信がないのでどうしよう、俺が家を出ようと思って
 いる」と、再婚したダンナが言っているそうだ。
前妻は私と離婚した丁度半年後に、今のダンナと3回目の結婚をした。
子供は2人、一人は初婚の相手で二人目は今のダンナとの間の子。
長男(初婚の子)は、私が前妻と結婚生活をしていた頃に育てていた子
で幼稚園に通う頃に引き取り、4年生になるまで養子として育てた子。
名前は弘朗といい仇名はウニ。
ウニにしてみれば4年生にして3人もの父親という事になる。幼少期に
預けられていた親戚から虐待をされた経験から、私と出会うまでは他家
の大人とは口もきかない子だったそうだが、私はウニを本当に愛して育
てたので、3人のパパの中では私が一番好きと言ってくれているそうだ
今ではウニも中学生、もう母親である前妻の手に負えなくなる年頃だ。
今のダンナも子育ては初めてだそうだし、自分の子が生まれてからは
前妻の連れ子であるウニの扱い方に悩み始めたらしい。そこでウニが一
番慕っていた前夫である私に相談があったわけだ。
私にはこうなる事は安易に想像していたし心配もしていた。
「お父さんと呼んであげなさい」とか「一緒に風呂は入ったか?」など
ウニからTELがある度に言ってやっていたが、最近ではウニもすっか
りTELをしてこなくなり、そろそろ反抗期で親離れだなと薄々感じて
いたのだ、ましてや私が愛情を注ぎ込んだ子だ、他家の者がそれ以上の
育て方が出来るわけないという自信もあったからだ。それに前妻は子育
てというものを殆どできない、ウニが母親に物をねだるのを一度も見た
ことがないほどだ。私は今でも離婚するのはあの時期ではなかったと思
っている、子供にとって親の都合など関係ないのだ 強引に離れていっ
た前妻の行動は間違っていたと思っている。
そんな前妻からの相談だったが、子供のことだったので前妻を叱りつけ
るわけにもいかず、ダンナへ矛先を向けて助言をした。
「チュンちゃん、よく考えてみなよ 子供だったころ誰に育てられた?
 大人だろ、血が繋がっているとかいないとかじゃないだろ?妙な遠慮
 なんかしてちゃダメだぞ。自信がないだって?そんな事では保護者と
 して失格だ、連れ子として接しているからそうなるんだ 自分も子供
 になって馬鹿になって子供の目線で接っしてやらんとな、分かるか?
 子供にとって頼れるのは親しかいないんだぞ」と、前妻に言うと前妻
は珍しく「そうね」と答えた。
私は、今の内容をチュンの言葉でダンナに伝える事と、反抗期の子供に
必要なのは敬愛している者からの叱咤激励である、という事も付け加え
た。
親がなくても子供は育つなどと愚かな言葉もあるけれど、それは違う。
子供は親の愛情と英知を受け継ぎながら成長するものだ、金をかけてい
い思い出を作ってやればいいと思っている馬鹿親も多いがそれも違う。
押し付けられた思い出などは感謝されるどころか恨みとなってしまう、
そんな金があるなら子供に現金を持たせて自由に使わせてみろ、子供は
それなりに分別があるものだ、その金の使い道でその子の性格や今の
願望も分かるというものだ。
そして「どうしても子育てに自信がないなら、育てやすい子供に教育し
てやるから俺のことろに遊びに来させな、手に負えなくなる前にな」
と、チュンに言って聞かせた。
ウニももう中学生だ、そろそろ男同士の会話ができる頃だろう。
思春期の子供にはちょっと刺激が強いかもしれないけどな。

4765(104)            27日AM0時15分