タバコ

タバコ

私は愛煙家である。
こうやって何気なしに文章を書いている時は、いつも決まってタバコを吸ってる。
そして書き終るまで今回は何本タバコを吸ったな、などとタバコの本数を勘定するのが密かな楽しみでもある。
こんなささやかな、愚かな、どうでも良い楽しみを持つといった習慣は誰にでもあるのではないだろうか?
そうした個々のどうでもいい習慣集を本にすれば面白くないかな?などと考えほくそ笑むのである。

私は子供の頃切手を収集していた。
当時はゲームなどもあまりない時代で、子供たちは遊ぶといえば外で遊ぶかコレクションに精を出すかといった具合に、何かを集めるといったことも重要な遊びの1つであった。
折りもおり日本は切手ブームであり、「切手は趣味の王様」などというフレーズも煽り、熱心なコレクターは早朝から郵便局の前に列をなして新発行の記念切手を買い求めたものだ。

私もそんな熱心な少年の1人だった。

1つ違いの兄がおり、兄も同じく切手収集をしていた。
その兄とよく話したものだ。
私たちの小遣いは両親の教育方針で他の友人と比べて少なかった。
でも子供たちにその意図は全く理解できない。
そこでこんな会話になる訳だ。

「小遣いが少ないから切手が集められないよ、あの切手のシリーズ欲しいなー。
お父さんなんて1日にタバコを2箱吸ってるんだって、1箱150円だろ、1日で300円、1ヶ月で9000円、1年で幾らになると思う?
それをみーんな燃やして灰にしてるんだぜ!
俺たちに小遣いくれれば切手を買うのに、親は無駄に燃やしているだけだな?大人ってなんであんなにバカなんだろ!
貯金しなさいとか勉強しなさいとか、無駄遣いしてはいけないと言いながら自分らはどうなんだ?」

大人の事情を分からない子供たちは、灰になってゆく天文学的な数字を思い浮かべて悔しいがったものだった。

今思うと懐かしさと共に、親の思いに感謝できるが、当時の私にはどうしても我慢できない憎むべき事柄の1つであったのだ。

それにしても懐かしい・・と。
しみじみした文章もたまには良いな、我ながら良い文章だなと読み返しながら、私はまたタバコを咥えライターで火を着けるのである。

人間は本当に愚かな生き物だ。