初めの一歩
今日タイムカードを押し終えて帰社しようとした時だった。
施設長に呼び止められ渡されたものがあった。
「社員証」であった。
確か私の研修期間は2ヶ月間の筈だったが・・・。
何はともあれ、有難く頂戴した。
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私が所属している会社は有料老人ホームに特化している。
有料老人ホームを全国に100以上保有している。
従業員も5000名以上おり、介護業界の有料老人ホームという
カテゴリーの中では最大手の企業である。
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会社の中にランク付けなるものがあり、私の所属する施設は何年か
連続してAランクを獲っているらしい。
従業員のランク付けもあり、全施設の中でもベスト10に入っている
先輩が2人もいるのだ。
そういった先輩たちにしごかれ叱咤激励されて過ごしたこの半月。
社員証を手にしたって事は、どうにか私も仲間として認められたって
事だろう。
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それにしてもどうだろう。
私の因縁星の深さと言うか、逃れられない運命というか。
私は始めこそ知人を頼ったが、条件としては「自宅から近い施設」
だけだった。給料その他の事は何も言ってない、社員登用だって私の
様子をみてからにして欲しい、特別な事は何もしないで欲しいと、面接
の時にお願いした。
それがどうだ、よりによって自宅から一番近い現在務めている施設が、
社内全体でも有数の成績を誇る施設だったのだ。
当然そういった施設で働く者たちはスキルが高い、私はその中でそのスキル
の高い先輩たちにしごかれてスキルアップしていけるのだ。
今は体もキツイし、毎日目の回るような忙しさだけど、少なくとも仲間として
認められたのだ。
数年後には、私はどこででも通用する介護職となっている公算が高い。
だから、その頃に目標を更にステップアップする必要があるのだ。
それが独立なのか何なのかは分からない。
分からないが「出来てしまう」という飽きや、飽きからくる傲慢の心に
支配されない為にもそうしなければならないのだ。
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とにかく今は、ただひたすら自分を捨てて、自分に鞭打つのみ。
目的はただ一つ、素晴らしい先輩方のスキルを全て盗み身に着けるべく。
私は自分と戦っているのだ、静かに静かに戦っている。
その戦いは始まったばかり。
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178510 H22 11月7日 PM20時50分