爾山
何とも胸糞悪いとはこの事である。
爾山へ向かう竹林はかっこうの散歩道である。
竹林は程よい風と湿気があり、刈り取れれなかった筍がグングンと
伸び、伸びた竹からは筍の薄皮がハラハラと地面に落ちる。
地面に敷き詰められた薄皮は、梅雨時の雨でふっくらとしており、それを
踏みしめながら歩く感触はこの時期ならのものである。
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そんな散歩をして小高い場所へ上ってている途中、親子連れがいた。
小学生低学年くらいの男の子とその父親であろうか。彼らは小高い場所から下
ってきていた。親子連れと私の距離は5mくらいだっただろうか、坂にな
っている場所だったので私からは親子連れを見上げるかっこうになっている。
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そのときだった。
男の子が私にむかって石を投げつけたのだ!
石の大きさはソフトボールくらいはあっただろうか。
私は飛んできた石を避けたので大事はなかったが、危険極まりない行為である。
腹立たしいことこの上ないではないか!
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私は父親であろう男に抗議しようと歩みよった。
男は一見してサラリーマン風ではない。
ところが、
父親であろうその男は私に謝まろうともせず
「何てことしやがるんだ、えらい事してくれたなオイ!、落とし前つけてや
ろうじゃねぇか!!」と、
まるで私が言いたかったようなセリフを子供に対して吐き、
「その腕へし折ってやる」と、凄いけんまくでまくし立て、腕を掴むと、
男の子の腕の関節を逆方向へ折り曲げようとしている!!
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私はビックリしてしまった。
子供は大泣きしている。
男の子をよく見ると、あちこちアザがあり包帯をしている箇所もあった。
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テレビなどの報道ではよく耳にするが、
私は児童虐待の現場を目の当たりにしてしまったのだ。
あっけにとあれて仰天していた私だったが、とっさに父親に掴みかかり
「やめてくれそんな事!そんなの教育じゃない
子供を虐めないでくれ、俺は子供が好きなんだ!!」と、
私は怒るどころか父親に哀願し涙まで流しているのである。
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父親から子供を引き離したら、今度は子供が私にしがみ付いて泣き出した。
何故か私も一緒になって泣いている。
子供を抱きしめて頭をなでてやろうとしたら、それは子供でなくて
飼い猫のメイにそっくりの黒い猫だった。
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まったく胸糞悪い夢であった。
何が胸糞悪いかといえば、虐待を静止しようとする自分はいいが、あまり
にも情けない止め方だった。もっと冷静に対処できなかっただろうか?
それに夢の中とはいえ、それは全て自分の心の中でもある。あの父親は私
でもあり、そのような邪悪な心が私の中に潜んでいるということだ。
それにどうしようもない突発的な出来事に涙して哀願するだけなんて!
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ああ情けない、
現実にはそうあって欲しくないものだ。
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164379 H22 6月18日 PM2時50分