特急列車
釣り友達からお誘いがあったので、市谷の釣堀へ遊びに
行く事にした。
友人は仕事を早目に切り上げて来るそうで、現地集合。
市谷の釣堀って、都会のオアシスって感じでお手ごろ。
今日の天気はどうなのだろう?
昨日みたいな天気だったら最高!
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「何もかも忘れ、考えずに、夢中で楽しむ」ってやつを、
一度でいいから経験してみたいもんだ。
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私にとり、その近い状態になれるのが釣りか植物のとき。
どちらも、人との会話をあまり必要としないからいい。
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エサを喰う事だけで「チクッ」とも感じないのが魚だけど、
そんな魚を見て「いいな〜」と、感じるときがある。
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今日は夕方ごろまで釣堀の巨鯉と戯れて、そのまま実家に帰る予定。
来週からは忙しくなる。
やるべき事が山積してるから・・・しなきゃ。
大丈夫かな俺?こんな生活してて、この先大丈夫なのかな?
まだ体が動くからいいけど、
まだ相手にしてくれる人がいるからいいけど、
このまま歳をとり
このままのサイクルで生活をし
体調も相変わらずで
もし
何かのきっかけで、大きな失敗をしたら・・・
もし
何かの大きなショックな出来事が起こったら・・・
そのとき、私は逃げずに自分の運命と闘うことができるだろうか?
電柱の男みたいになったりしないだろうか?
正直ちょっと不安だな。
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早目に別の突破口を考えとかないとな。
本当はそっちの営業に、
「いい方向の人生」の営業に力を入れるべきなんだろうな・・・
そういう自分に早くなりたいものだ。
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温暖化やエコの問題で、近頃うわさになってる屋上庭園。
ビルの屋上に芝生を張ったりするやつ。
その際、屋上に敷く特殊な土のようなものがあり、
その土のパテントを取得した人が友人の知り合いでさ、
だから「そういう営業の仕事もあるよ〜」って言われている。
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植物関係で私の理想としている仕事とはちょっと違うけど、
それも一つの造園だし、
私のように、まっとうな職業の感覚に鈍った人間には、
丁度いいリハビリになるんじゃないかな?と思ったりしている。
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女なんて金なんてどうでもいい、
普通に暮らしていければそれでいい。
ごく普通の、一般的な生活をする人間になりたい。
でもそういう普通の生活こそが一番難しい事も承知している。
一度世間からはみ出したアウトローは、なかなか戻れない。
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このように私は普通の事もよく考えてたりしてる。
占いとかコンピューターのデーターで、自分の適職を調べると、
「アナタの適職はホテルマンです、将来は有望な支配人です」
ってなるんだよ。
本当なのかな?笑っちゃうよ。
その昔、調理師だったころがあってさ、
一流レストランの一流シェフを夢見てた頃もあったんだ。
一流シェフになるなら舌が大事だろうからって禁煙なんかしたりして、
それはそれは勤勉だったな。
ちょうど調理師専門学校に通っている頃でさ、
「夏休みに一ヶ月間現場研修」ってのがあってさ、
(夏休みだから勿論希望者だけね)
私なんか勇んで参加に手を挙げたよ、クラスの中じゃ私だけだった
と思うけど。
意気込みがあったからね〜(笑)
そんで学校推薦の研修現場ってのもあってね、
その中には名の通った一流ホテルもあったわけよ、
私は当然そこを希望して、そこの枠に入れて貰ったわけよ。
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枠には入れて貰ったけどさ、やっぱりそこは人気なのよ、
説明によれば「そのホテルのどこの部署になるかは現地で」ってね。
調理関係ならどこの部署だってこっちはいいさ、
クラスのウスノロたちがのんびり夏休みコイてるときに、
こっちはお先に〜!!って感じで憧れの現場で実践よ!
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集合場所は東京駅だったかな、現場がリゾート地のホテルだからね。
東京駅で待ち合わせ、指定された時刻の特急列車に乗るという段取り。
その前日なんかドキドキしちゃってさ、
もう夢心地なんだよね、
だって、田舎から出てきた世間を知らない18才の小僧が、
明日からあの有名ホテルで、一ヶ月住み込み研修で働けるんだぜ。
夢への第一歩ってやつさ!
ホテルで働きながら、そのホテルの売店で売ってるであろう絵葉書
なんかで手紙を出そう、
田舎の父母に立派な報告もしよう、
友達の誰に自慢してやろう、
好きな女には手紙だけじゃなくて、お土産も贈ってやろう、って。
もう、色んな事を考えちゃって、前日の夜だっていうのに、
翌朝の10時頃に東京駅へ行けばいいだけなのに、
ワクワクしちゃって寝れないんだよね。
研修先ではどんな仕事かな〜とか、
泊まる場所はどこなのかな〜とか、
大勢いるだろうから、オナニーはできないかなとか、
たまにはホテルの部屋にも泊まれるのかなとか、
そこでオナニーしてやろうかなとか、
バレたらヤバいかなとか、
いやいや、不埒な事は考えてもいけないぞとか、
印象を良くしなきゃ、
一週間前から準備していた手荷物の再チェックとか、
調理師の研修のくせに、スーツをビシッとキメていこうとか、
とにかく寝れないんだよ。
でも寝てないと顔色悪くなるから、
初日が肝心だからと、
印象が肝心だからと、
2〜3時間でも仮眠しとこうと布団に入った。
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で、・・・目が覚めたのが昼過ぎだったてワケよ・・・
当然東京駅には誰もいなかったよ。
携帯電話なんてない時代だからね、連絡しようもないし。
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結局、ノコノコと一番最後に現地に到着した私の研修先は、
ホテルに出入りしている下請け業者のそのまた下請けになった。
単なる田舎の駅の大衆食堂だったよ。
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今から考えてみりゃ、あれが人生の階段を踏み外す第一歩だったか
もしれないな。
だから、エリートになったり普通の生活をするのは大変だって事は
、自分には大変だって事もよく分かってるんだよ。
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あれ?もうこんな時間だ。
まだ続きがあるんだが、そろそろ釣り友達と待ち合わせの時間だ。
遅刻はよくないからね、
「人生という列車」に乗り遅れている私だが、せめてプライベート
では普通の人間でいたいからね。
それじゃ市谷へ行って来る。
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109639(128) 17日 PM0時55分