打ち合わせ

あるメーカーとの打ち合わせ。
新規のメーカーに今まで撮った作品サンプルを見せ、
「こんな感じの作品です、すべてスカウトマンがつれて来る子
 で構成されてます。作風は御社のご希望に沿うようにします。
 こちらからのニーズは、毎日のように連れられて来る女たち
 の活用とそれにかかる経費分です。あと欲を言わせてもらえ
 れば利益をのせてもらえれば尚嬉しいです。」
と、この様な概略で話を進める。
普通に考えればこんな美味しい話、そうざらにあるものではない。
これは漁師が問屋を通さずに、漁師価格で小売をしませんか?と
言っているようなものだからだ。
中には当然、傷物もあれば雑魚など規格外も含まれる。だからこ
そ漁師価格でグロスの商売をしようともちかけているのだ。
そして作風は「ご希望の」と、大幅な譲歩までしている。
それなのに話が前へ進む事は滅多にないのである。これが10年
前だったら私も引く手あまたであろう、週末にゆっくり休むなん
て不可能だった筈だ。
現在は売れないのだ、どんな商品が売れるかも分からないのだ。
ネットの普及により、ユーザーの細分化されたニーズに応えるが
常識となってしまった現在では、その場でサンプルを見せられた
担当者にその価値を見出せと問われても答え様がないのだ。

よほど特上の女なり、突飛な内容でもない限り見向きもされない
のが売り込みの現況だ。そしてその原因の第一は業界に金がない
という現実に尽きる。
私が才能溢れる人物であるなら、あの手この手で作風を変え女を
変えて売り込みもしようが、そんな能力あればやっている。
努力してみるが、いよいよこの商売もやりずらくなった。

明日も別のメーカーと打ち合わせの予定だが、だいたいの予想は
ついている。
私のような古いタイプの人間は、逆に必要以上の無理もしないし
、してはならない事も知っている。
つまり、こうして業界での自分の必要のなさを少しずつ実感とし
て捉えてゆき自分を納得させるものなのだ。それ以外に術もない。
まだ多少のニーズはあるだろうし、無理や意地で「明日から辞めた」
みたいな事はしないのだ。
そうしているうちに、次に力を入れるべき仕事がみえてきたりして、
私のような根無し草は次の止まり木を探してさ迷うのだ。
「器用不器用」って、たぶん私のような者の事なんだろうと思う。
まだ体が動くからいいが、いつまでこんな事が通用するのだろう?
終生の止まり木を早く見つけたい、学生時代から親や教師はそれを
見つけるよう指導してくれたが、私のような人間にそれが出来れば
苦労しないさ。得手不得手ってもんがあるからね。
誰が悪いって事でもなく、誰が勧めた人生でもない、私が選び進んだ
人生だから。
今時点では金も家庭もなく結果的には自分の判断が一番いけないかっ
たって事だけど、そんなに俺ってヘンな人間かいな?とも思う。
たまたま今が谷底なのかな?それとも必然だったのかな?
いや今までのパターンだと私の運勢は、谷も山も交互に急激だから
きっと近い将来か何年先には素晴らしい人生が待っている?かな?
悲観しててもしょうがないし、努力と期待してた方がいいかな?
どっちか分からないけど、生きてりゃ何かあるだろう、うん。

「♪人生楽ありゃ苦もあるさ〜」、お後がよろしい様で。

83194(138)  13日  PM7時5分