渦の中にて

日本の各地で紅葉と冬将軍のニュースをしている季節になった。
東京では先日、小春日和が一日あった。道行く人たちもマフラーをして
いる若者が目に付くようになっている。
今年もどうやら私は「秋」を乗り越えて体調も復活してきた。
冬に突入すれば発作の心配も少ないので一安心だ、そうなると今度は心
配になるのが仕事の事。
ここ何ヶ月というもの、殆ど仕事をせず過ごしてきた。毎日昼過ぎに起
き昼ドラと夕方の刑事ものを見て腹が減ったら近くのコンビニ、99へ
買出しに行くというまったく無意味な毎日だ。活動を開始するのが夕刻
だから日没もはやい、「また今日も一日が終わってしまった・・ジュン、
お前と出会ってから俺のペースが乱れている、お前が俺の仕事に理解を
示さないから仕事をする気にならないんだ!この疫病神め!!」
こんな言葉で八つ当たりをしながらも、幼児プレーのように甘えたりも
している。そうなのだ私は時として暴君であり、時として幼い子供かボ
ケた老人のようになってわざと叱られるのを期待しているのだ。
こんな私を世話する者は、たまったもんじゃないだろう。だからいつも
相手に逃げられるのだ、私は分かっている 私は正しくないという事も
今の仕事が正義でない事も。仕事という大義名分で無理やり納得させて
麻痺をしていた以前の感覚が時々甦り自分を否定する。その一方で自分
の存在意義を否定したくない思いが湧き出し、世の中には正義もあるか
ら悪もあるんだという屁理屈で正当化しようとし、前者と後者は葛藤す
る。
「こんな仕事やめてガードマンでもなんでもやれば?私はここへ来るモ
デルの顔も見たくないから仕事のときは外に出てるのよ」と、ジュン。
「ふん!ストリッパーの成れの果てが!俺の仕事を否定するな、ヘルス
で一万人のチンポをしゃぶったその口から出た言葉とは驚きだな」と、
私も口汚く罵るが内心では嬉しく思っている。
実際に私の仕事のことを、真っ向から否定してくれた女と一緒に棲むの
は彼女が始めてなのだ、そんな女は今まで一人もいなかったのだ。前妻
でさえ、私の男優行為は一切禁止だが前妻が男と遊ぶのは見逃す事とい
う理不尽な条件で私は結婚していたのだ。
それにひきかえジュンは、自分も浮気をしないと言ってくれている。
オナニー禁止令が発令され、いまだ解除されてないのは不満ではあるが
「どんな女とでもヤッていいよ」と、言われるよりはまだいいと思い始
ている自分自身に私は戸惑っているのだ。
ひょっとしたらジュンは、私を止めてくれる最後の女なのか?
そんな彼女も、タッキーのコンサートへ行くための「滝沢貯金」なるも
ののために大金を短期間で稼ぐ仕事を探している。
そんな仕事は風俗かそれに似たような仕事以外では考えられない。
あえてどんな仕事をジュンがするのか・・聞くつもりはないが・・・。

つまりそういう事なのさ。
この仕事は、男女関係の感情がはいるとどうしようもない結果になって
しまい悪い事のようになるが、いざ短期間に大金を必要としている者に
とっては正義なんだよな。傍からみている人や金持ちには到底理解でき
ないだろうね、この仕事に関った者のみが知りえる事情ってやつだ。
そう考えればどうだ?また一つ私の言い分も成立するだろう?私が今す
ぐに この仕事を捨てなくてはならない理由はどこにもない筈さ。
どっちが正しいなんて事は誰にも分かりはしないってもんよ、ただいつ
までもやる仕事じゃないって事だけは思っているが。

22181                 AM6時10分