曇り空のように

小雨がパラつく曇りの日が続く、晴れの日が少ない。
来る筈のM女から電話もない、新しい女を連れて来る筈のスカウトマン
からも連絡がない。朝8時から起きていたので昼飯を食べた後ジュンを
抱いた、昨日から体の調子が悪かったジュンだったが今日のジュンはい
つもより声も大きく感じているようだった。30分ほど腰を振っていた
私だったが疲れてしまいイケずにやめた。
そして先ほど二人でコインランドリーから帰ってきて一服している時だ
った、ジュンの携帯電話がけたたましい着信音を鳴らした、普段は着信
音をOFFにしているジュンなのに今日に限って大きな着信音。
相手は男の声だった、通話音も大きくしているのだろう会話も筒抜けで
ある、だがこれはジュンがわざと私に会話を聞かせていたのだ。
電話を切ったジュンは「私出掛けて来るから」そして「2,3日中に
ここを出て行くから」と言い出した。
理由としては、
① AVの撮影場所なんかでは住めない、気が狂いそう。
② 女スカウトマンに仕立てられ利用されるだけで終わりそう。
③ 「彼女ではない」と言われ仕事のパートナーとしては無理。
④ 他に頼れる男もいる。 
などなど、私に対し腹に据えかねた理由を矢継ぎ早に喋っていた。
確かにジュンの言わんとする事はもっともだ、ある意味普通の社会にい
る者の考え方だと思う。
私はいきなりだったので、ちょっと驚いたが 彼女にしてみれば私に対
する最初で最後の満を持しての逆襲だったのだろう。
私は「短い間だったが楽しかったよ、寂しいけどな」と言った。
来る者は拒まず去る者も追わずだ、私もここが仕事場でなければ女に対
しそんな扱いはしない、だが私はこの業界に生きる者でありここは小さ
いながらもAV撮影場所兼事務所なのだ。ボランティアを出来るほど裕
福ではない、利をもたらさない者なら早かれ遅かれ去って行く事になる
のが自然の理というものだ、ただそれだけの事だ。
それにしても女はいつも腹黒い、さっき携帯電話が掛かって来るまでは
そんな素振りを微塵も見せなかったのに・・・。私は女の操縦が下手と
言うことだろう、またしても一本取られてしまい自分のガードの甘さを
反省する事になってしまった。
ジュンと暮らして良かった事、それはジュンが来てから不眠症が解消さ
れた事だ、それについては心から感謝している。
玄関を出て行く時ジュンが「今日だけは泊まらせてよ、反省しろよ」と
言っていたが、きっと今夜がジュンとの最後の夜になるのだろう。
私は今、初めてジュンの帰りを待ちわびている自分に気付いている。

7505(212)           PM10時55分