思いがけぬ偶然

本格的な夏になる前に、梅雨の合間の涼しいうちに江ノ島近辺をジュン
と二人で歩きたかった。
ジュンは色白で日焼けに弱く、日焼けすると肌が赤く腫れて痛くなるそ
うだからだ。彼女の肌は前妻と全く同じだから私もよく分かっている、
夏には外を出歩く事を極端に嫌う女の肌だ、強い日差しに当たると日焼
けせずに水膨れになってシミになってしまう事も知っている。
ジュンは初めから、江ノ島へ行くのは乗り気ではなかったのかもしれな
い、理由は分からないが電車で出かけるのが面倒なのだろうか?
私のシュミレーションは、湘南スカイライナーで池袋から鎌倉、そこか
江ノ電に乗り換えて鎌倉高校前か七里ガ浜で下車し、江ノ島までの海
岸を歩き途中で昼食と、トンビ集めの芸を披露する。トンビ集めの芸と
は、食パンを一斤買っていき パンのミミを真上に向って何度も投げる
そうすると眼の良いトンビが飛んできて、空中でミミをゲットする は
じめは一羽だけだが、そのうちに何十羽という大群が頭上を乱舞しその
様は壮観だ。この芸は誰でもできるが、餌の少ない冬場や子育てに忙し
いこの時期は特に数が集まる、人の少ない浜辺は絶好のポイントだ。
そして江ノ島へ渡り、参道下でイカの丸焼きを食べながら江ノ島神社の
参道を登り神社に参拝 江ノ島神社は縁結びの神様弁才天を祭ってある
のも目的の一つだった。私は女性との出会いは多いが、長くて半年ぐら
いしかもたず逃げられる、ジュンにはもっと傍にいて欲しいのだ。
そのようなプランを考えつつ「明日は早起きだよ」と、床に就いた。
明けて今日の早朝、私達は湘南スカイライナーに揺られている筈だった
。 ところが2人が目覚めたのは大河ドラマの再放送が始まる時間。
「あーあ」と思ったが後の祭り、ちょっと前まで不眠で悩んでいた私が
最近では朝に起きれない「起してくれない方が悪いじゃない」とジュン
にも言われてしまう始末だ。寝起きで眠い私は、そう言われても腹もた
たない・・このセリフ、どこかで聞いた・・・ような。
そうだ、この懐かしい朝の倦怠感やこのシーンは結婚時代にはよくあっ
たシーンだ。あの頃と何も変わらない・・リュックを背負った息子が
出発はまだか?と催促するシーンがないだけマシだった。
お出かけを諦めた私はブログを書き、ジュンはテレビを見ている。
ベランダには干してある赤いふんどしが風にヒラヒラ揺れて笑っている
ようだ、いつもと変わらぬ時が過ぎている。
これも一つの幸せなのだろうか、いつまで続いてくれるのだろうか?
2238(108)               PM4時30分