都会の片隅で

昨日外に出ようとしたら傘がない、玄関の外に傘立てに入れておいた傘
が全部なくなっていた。私の住居は何世帯も入っている集合住宅 その
1階が私の部屋だから他の住人が持っていってしまうのだ。20本まと
めて購入したビニール傘も半年後には1本もない有様なのだ。さすがに
昨日はちょっとムカついたので、張り紙を傘立ての傍に張っておいた。
「傘を持っていく君!1本ぐらい残してくれよ 雨のとき困ったぞ」
まったく、なんという住人なんだろうね、人情紙風船なのか・・・。
雨が止んだと思ったら今度は風が強い、春らしい気まぐれだ。
晴れたら釣りに行こうかと思っていたが中止にした、昨日の夜歌舞伎町
を歩いていたら いい物を発見したからだ。ゴミ捨て場のビニール袋の
中に胡蝶蘭の葉っぱを見付けたのだ。風林会館そばで人目もあったが私
は、コジキよろしくゴミ袋を漁り胡蝶蘭の状態を見てみた。すると程度
のいい状態の株が9株もあったので全て持ち帰った。私は植物愛好家だ
が、店で売られているような立派なやつには興味がない、枯れかけた鉢
物や、花がおわって葉っぱだけになった様な蘭を育て再生させるのが好
きなのだ。まだ生きている植物に僅かでもチャンスがあるのなら、それ
を活かしてやりたいのだ。歌舞伎町界隈にはホストクラブをはじめ多く
飲み屋がある、何処の誰が捨てたか知らないけど花を贈った相手に真心
はあったのだろう、その花をゴミとして捨てるとは・・・やはり人情紙
風船なのだろう。今のご時世、これだけの蘭を相手に贈れるという事は
贈った人は成功者なのだろう、だが受け取った者は植物を育てようとも
しない貧しい心の持ち主だ。水商売は見栄の世界であるが、その醜悪な
構図の一端を捨てられた胡蝶蘭に私はみた。
母は私に「樹医になればよかったのにね」と、よく言う。私もそれは考
た事もある、知識だけでいえば その辺の花屋よりも詳しい自信はある
が、それがビジネスだったらどうなのだろう?一年中、植物の生死に関
わる仕事など私には自信がない。それと似た理由で、私の父も医者には
ならず国金を扱う金融会社に勤めていたのだ。だから親の血なのかもし
れない。かといって現在の私はAVの仕事に身を投じているし・・・
カッコよく言えば、「運命に翻弄されている」で、悪く言えば「本性が
女衒」なのが私だ。
胡蝶蘭・・学名ファレノプシス、熱帯性寄生蘭 バイオ技術の発達によ
り品種も多くなり、近年は手軽な値段で取引されている。直射日光の当
たらない涼しい日陰を好む。容器は通気性のよい素鉢が好い。寄生蘭な
ので根が鉢の外に張り出してくるが、それが健康な状態である。気温管
理が日本では難しく15度を下回ると成長を停止し10度以下では死滅
がはじまる。花屋で見かける立派な姿、大きな塗鉢に3株ほどが植え込
まれているのを、よく目にするが あれは実は胡蝶蘭にとって最悪の状
態であって、死を待つ姿なのである。早期植え替えを要する。

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