あの頃 1

幼い子供を連れた幸せそうな家族連れを見ると、私も4年前までは
ああだったんだなと、過ぎた過去を思い出してしまう。
美しい前妻には子供があったが、そんな事は関係なかった、むしろ
子供好きな私は、彼女に子供がいたからこそ彼女を愛してしまった。
一度結婚し、子供までも受けながら離婚という辛酸を経験した女なら
私のような人間を受け入れ、今度こそは幸せな家庭を築けるであろう
と、「子供がいる事」が、結婚相手の条件だったからである。
子供が5才の時に私達は結婚し、3人家族として池袋のマンションに
住み幸せな生活を送っていた。子供も私に懐き、「パパが大好き」と
、私にばかり付いて廻り仕事場にもよく遊びに来ていた、一方妻には
幼い頃から厳しく育てられていたとみえ、ただの一度も甘える事もな
く、オモチャをおねだりする素振りさえ示さなかった、おねだりは
いつも私にであった。前妻はよく言っていた「あんたにすっかり子供
をとられたわ、ああやって おねだりされるのが、夢だったのに」。
私はそれを聞いて子供に言ってやったものだ、「ママにも言ってごら
ん、うにちゃんの好きな物買ってくれるよ」と、言い聞かせても子供
が前妻にねだる事は一度もなかった、子供は恐れていたのだ。子供心
にも自分の母親が、本当は怖い人だと感じ取っていたのかもしれない。
前妻は美貌もさることながら、並みの女ではなかった。
スーパーウーマンとでも言った方が、彼女には適切かもしれない。
芸能界の新人なら誰もが憧れる、あの「松島菜々子」の所属するエク
シードアルファーという芸能プロダクションを、どんなコネを使った
か知らないが、そこに所属し「人妻温泉」という深夜番組のレギュラ
ーだった、それも新宿の「若プロ」という芸能養成所を1年も通わず
にである。人脈も豊富だった、私が恐喝で逮捕され危うく実刑に服す
ところを無罪で釈放するウルトラCをだしたり、派遣法違反で逮捕さ
れたと時も、担当検事を検事交換するという離れ業をだし私を救った、
前妻の人脈に、検事総長がいたから成せた業である、おかげで私には
執行猶予が付いていない、これはAV業界の者で派遣法違反で逮捕さ
れた者の中で、執行猶予が付かずに起訴と罰金だけで済んだのは私ぐ
らいだろう。前妻は全身整形も0円でやってのけている、これもまた
どのようなコネか知らないが、多くの順番待ちのモニターの人を飛び
超えて、前妻の希望する1週間以内にしてしまった。エステや化粧品
もプロ顔負けで、「シュウウエムラ」で統一されたメイクボックスの
他に、化粧品専用の箪笥まであった。クローゼットに入りきれない数
のシャネルのスーツもあり、カーテンレールに吊るしていた、おかげ
で南向きの寝室はいつも薄暗かった。新宿の伊勢丹シャネル売り場で
は店員にビップ扱いされており、会計の時だけが私の出番であった。
寝室に30万以上するとうキングサイズのベッドで、前妻は寝ていた。
私はといえば「おい、お前」と、呼ばれ 子供部屋で薄い布団で子供
と寝ていたのだ。酒が強く会話上手、歌もクラブ経営でママをしてい
たので下手なプロより上手かった。そうそう前妻は広島でクラブを経
営していたので、しかも昔なじみのパトロンがいたので、それなりの
人脈と金を持っているのだろうと思っていた。ところが事実は違って
いたのだ、結婚以来預けていた私の貯金と、プロダクションで稼いだ
会社の金で買っていたのだ!結婚後半年でそれは発覚することになる。
43069                   PM9時20分