未来の宝

朝方は雨が降っていたが昼前より回復し今は雲ひとつ無い快晴。
少し風があり、ベランダの植木の枝がざわめいている。 ここのところ週末
となれば悪天候だったので、今日は絶好の行楽日和である 季節の果物を狩る
もよし、花を愛でるもよし、釣りや登山もいいだろう 家族のある者は少し
遠出をして観光地や史跡を巡るのもいいだろう、子供たちの思い出として今日
という日は末永く記憶に残るだろう。
私も家庭があった、妻と妻の連れ子の3人家族で その子が小学校の3年生に
なるまでの4年間、幸せな結婚生活だった。
私は子煩悩で親馬鹿なパパだった、連れ子とはいえ 眼に入れても痛くない程
子供を愛していたので、子供を遊ばせて育てた いつも一緒に遊び、私の仕事
場が子供の遊び場でもあった。「腕白でもいい逞しく育って欲しい」と思って
いたので学校の勉強には一切関知せずにいた。おかげで友達も多く素直ないい
子に育ってくれたのだが、子供が3年生になった春 授業参観に行った折り、
他の子供と比べ学業が著しく低いことに気付いたのだ、自分の名前以外の漢字
もろくに書けないし、計算も遅いようだ先生の質問に手を挙げようとしないの
もウチの子だけだった。
家に帰って来た子供に「学校は楽しいか?」と聞くと「楽しい」と答えたが、
授業時間が長いとも言った。さすがに私もこれはまずいと思い、その日から
公文学習塾へ通わせることにした、そこの学力テストの結果 子供の学力は小
学1年生程度もないと判明し、可愛そうだがスパルタで遅れを取り戻してやろ
うと私も心を鬼にして、定規でアザができるほど叩きながら勉強を教えた。
その頃の面白いエピソードがある。
学習机に向う子供の横に、50cm定規を手にして仁王立ちの私がいる、子供
が問題を一問不正解ごとにピシリと太腿に定規を振り下ろす。子供が「痛い」
と言って泣くが私のほうが痛い、だが威厳を保つために平静を装ってピシリと
やると、「なんで勉強ぐらいで僕は叩かれるんだよ!」と、つっかかってくる。
「パパはね、叩きたいんじゃないんだよ せめて同じクラスの子たちと同じぐ
らいの勉強ができるようにしてやろうと思ってるんだ 難しい勉強をさせよう
としてないんだ パパの考えは間違っているかな?」と、子供に問うと子供は
「難しい勉強をさせようとしてるじゃないか!」と、子供がムキになって言う
ものだから つい笑ってしまった。子供にしてみれば笑えない状況だったのだ
ろうが、この場面で笑わない親はいるだろうか?心で泣いても。