その気になって2

私が仕えていた人を当時、会長と呼んでいた。
会長は仕事柄、歴代の総理大臣や角界の大物フィクサーと呼ばれ
る人達とのつながりが深く、一例をあげれば 大物政治家だった
田中角栄の家にヘリコプターで将棋をしにいくような人だった、
平和島競艇場のビップルームでも会長が一番金額を賭けていた。
その会長からの殺人依頼だったので私に断れるはずはない。
依頼の相手は元会長の部下で、私も何度か食事をごちそうになった
事があり、認識のある人だった。
理由は単純で会長のやっている商売のライバルとして台頭し本家
である会長を凌ごうとしていたからだ。たしかそこに国税の査察
が入って2億円ほど払ったらしいが、それは氷山の一角だそうだ。
そのくらい金がうなっていたわけだ。
だから私にしてみれば3000万?たったの?という気持ちはあ
ったものの会長からの依頼だから仕方なかった、そこで私は考えた
、その人の家へ先回りして帰宅するまで庭先で待ちボディーガード
がいない時に実行しようかと、その人の家を調べたがあいにく
セキュリティーが万全でドーベルマンまでうろうろしていたのだ
私は家での襲撃を諦め、その人がよく通うクラブへ客として行き
その人が便所へ行ったときに便所で撃ち殺そうかと思った、ところ
がそのクラブは会員制で、いちげんの客は入れなかった。どちらに
しろ目的を達成させ速やかに現場を離脱するには音の出ない銃、
サイレンサー)付きかライフル、それと金が必要だった。
そこで私は会長に、依頼金の前渡と武器の調達は可能かを尋ねた。
会長の答えはこうだった
「俺に迷惑がかかるような下手はするな、銃を俺が買ってお前に
 渡したら俺が怪しまれるだろう、お前の個人的な恨みとして、
 相手と刺し違える覚悟でやるんだ!金は成功報酬だな。」
なんて奴なんだと私は思った、仮にも私は自分の命を賭してやろ
うと思っていたのに何の協力もしないつもりなのだ、やがて私の
気持ちは会長への殺意へとかわっていき、私のとった行動は。