卒業

気の毒がってやるべきか、迷ったのが実情であった何故なら
木下は他人の送別会かと思い会費まで払っているからだ。
このような場合、あなたならどうする?ふざけるな!とテー
ブルをひっくり返すか、愚痴の一つも言ってみるか、だが
木下はそうはしなかった。
「ハハハうっかりしてたなぁ〜」と笑い飛ばしたのだ、そこ
が木下の凄いところだろう、彼はぐっと堪えてその場を耐え
た。
私は二次会で木下が泣いていたのを見た
聞くところによれば、木下の彼女が末期の癌で大変な時期
だそうだ、悪いときには悪いことが重なるものだ
世の中には捨てる神あれば拾う神もある、木下の会社も木下
を見捨てたわけではない。
実は別会社を発足させ、そちらを木下に任せるつもりでいた。
それでこのような手の込んだ千尋の谷を用意したそうだ。
今の木下に一言いってやれるとすれば

  ( 親思う 心に勝る 親心 )だろう

木下、必ず崖を這い上がって来い、
今度会うときは楽しい酒を飲もう。 

春の嵐が過ぎれば もう新緑の季節だ。