卒業

入学を喜ぶ者もいれば、卒業して巣立ってゆく者もいる季節。
歓迎会、送別会も宴たけなわといったところか、
私が世話になっている会社でも、先月末で退社した者が数名
いた。当日、退職者以外の者が会費を出し合い送別会の席を
つくり会場へ集合した。 

送別会での話である、当日の主役(退職者)が中央に座り、
上司から労いの言葉
「面白きなき世を 住みなすものは 心なりけり」

どんな境遇にあっても、心豊かに前向きに生きろという意味
だろう、女子社員の中には涙ぐむものまでいた。
人生いろいろだ、皆それぞれに思い出話もあれば野心もある
だろう 普段は口にしなくても酒が入れば喋り上戸になるの
が人情だ。
送別会が始まって30分くらい経ったころだった
社員の木下が遅れて会場へ入ってきた、木下がおずおずと
下座に座ろうとした時だった
「おい木下!真ん中に座れよ、お前が主役だろ」
木下は「へ?!」とした顔で尋ねる
「ぼ僕もなんですか?」

これは実際にあった話だ、木下は当日までクビになる事を
知らされてなかったのだ。
漫画のような話で今となっては笑い話となっているが当の
木下にしてみれば青天の霹靂だったろう。
私も木下とは何度か話したこともあるので知らない仲ではな
いが、気の毒がってやるべきか笑いを堪えるべきか困った。

ちょっと時間がない続きは来週