花火大会

花火大会の時の話です。

マッチやライターたちは口を揃えて言いました。
「俺たちがいるから火がつくんだ、
どんな大きな打ち上げ花火だって」

花火たちは色とりどりの形や音を演出し、これ見よがしに踊り狂います。

隅っこで隠れるようにして見ていた蚊取り線香は思います。
あんなに鮮やかに派手に注目されていいな。
同じ火だというのに、なんでこんなに違うのだ、
と。

そんな蚊取り線香に燃えカスになった老人マッチは言うのです。

「ワシも若い頃はそう思ったもんだ、早く燃えたいもっと強い火になりたいと、だから燃えそうな花火やお前に火を付けて意思を伝授した。
花火は見事に咲いた、あれはあれでいいんだ」

「あれはあれ?
花火さんが最高だと思ったんじゃないの?」蚊取り線香が不思議に思って燃えカスに尋ねると、燃えカスは静かに語りかけたそうだ。

物にはそれぞれ与えられた能力がある。
派手な奴等が羨ましく思うのか?
あいつらはお前の事を羨ましく思っているんだぞ、
目立たないかもしれないが、長い時間燃え続けられるお前の能力を。