自問自答

どうしたというんだろう?この虚脱感、焦燥感、それでもやってゆかねば
ならないという使命感。撮影の後はいつもこうだ。
この日記を書いているのは確かに私本人だ、そして沖本を演じているのも
私本人だ。でも私と沖本とはいつも頭の中で喧嘩している。

沖「ほう、お前たいそうな夢とやらを書いていたばっかじゃんよ?」
私「それは業界で働くための希望だ、何事にも邁進したい、その為には認
  められた環境で伸び伸びと仕事をしたいという話だ」
沖「だからお前は甘ちゃんなんだよ、俺になりきればいいだろう?」
私「いや、お前とは早く縁を切れと誰もが言う、俺もそう思う」
沖「よく言うよ!沖本の名前がなけりゃ、お前ただの中年オヤジだぞ!
  俺なしでどうやって食っていくんだ?」
私「別の仕事をすればいい、その気にならばクチはあるんだよ」
沖「馬鹿だね〜、お前の歳で見習い小僧からやるのか?俺と付き合っとけ
  ば月に数日の仕事で充分食っていけるだろ、それに俺を捨てるって事
  は俺と付き合った年月を否定するって事だぞ?」
私「前から気づいてはいたんだ、行動力がないだけだ。」
沖「よく言うよ、お前俺に成りすましてやったこと沢山あるよな?仕事以
  外でもな。」
私「そういう自分が嫌なんだ、もっと正直に素直に生きたい、そういう環
  境があれば明日にでも俺は行く、そこで家族ができれば生涯家族を大
  事にして静かに暮す、それが理想だ。」
沖「つまりお前は、画空事や作品を空想する事はできても、テメエの人生
  計画はメチャクチャ幼稚って事だな、そんな場所などあるもんか、そ
  んな考えだから女にも逃げられるんだよ、煮え切らない男ってのはな、
  いい人、悪い人、の前に相手にしたくない奴なんだよ」
私「そんなに私を攻めるなよ、お前を作り上げたのはこの私だぞ、私がこ
  の世を去らなくても、この業界を去るだけでお前という存在は消滅す
  るんだぞ、その辺を考えてものを言えよ」
沖「笑っちゃうね、今度は脅しときたか!そんな脅しは作品の中にだけに
  しときなよ、いいかい?お前が業界を去って、どんなに善人になろう
  が、死んでしまおうが、俺は作品の中で永遠に生き続けることが出来
  るんだぜ、鬼畜な悪人としてな!お前が作った作品の中でな!!」
私「そう言うと思ったぜ、それを消去する方法を私が知らないとでも?」
沖「そんな方法は絶対にない!あるなら言ってみろ!!」
私「言うわけねぇだろタコ!私の秘密兵器だからな、お前だいぶ焦ってた
  ね(笑)可愛いところもあるじゃんか鬼畜な沖ちゃんよ!。まぁ心配
  せんでもええ、もう少し付き合ってやるからよ、だけど言っておくが
  お前は所詮、私が作った架空の人物だってこと忘れるなよ!」
沖「お前のそういうところが怖いよな、好きになれないな」

と、まあこんな感じで、私はいつも勝利するが虚しい。本来ならばもう一
人の自分とは親友でありたい。せめて現実に私と対等な立場で私と向き合
える人がいたならとも思う。ついそれを女に求めてしまうが、女は仕事自
体に反対だから無理も無い、ジュンなんか仕事の前後は口もきいてくれな
くなってしまう。昨日から頭を叩かれたり足を蹴られたりイジメられっぱ
なしで、パシリみたいな事ばかりさせられている。
でもそれが嫌というわけではない、怒らせていた方がいいんだと判断して
いる。怒ってくれる人がいなければ、私は一生このぬるま湯に浸かってい
るような焦燥感に駆られるからだ。

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