声無き声

今週はジュンとずっと過ごした一週間だった。
彼女はこの事務所の居心地がいいのだろう、家に帰ろうともせず仕事
にも行こうともせずテレビを見たり私とバカ話をしてなんとなく一日
が終わってゆく。
昨日はジュンとフェラチオ20分勝負をした。フェラチオ20分勝負
とは、20分以内に私をイカせられたら女の勝ちで、女の言い分を聞
いてやるという私からの温情である。通常は撮影でやる勝負であり、
どうしてもNG内容をOKしない女に口実を与えてやるために考えた
アイテムの一つである。「男性関係や風俗経験が豊富だ」などと生意
気に豪語する女にはこの勝負を挑ませてやっている。もっとも日頃か
らオナニーで鍛錬している私にフェラチオごときで勝てる女などいる
筈もなく、いつも私は勝利し目的を達成させているが。
昨日のジュンとの勝負には晩飯を賭けた。初めは遊びのゲームのつも
りで私は負けるつもりだったが、思うようにいかず結局晩飯とタバコ
2箱を奢ってもらってしまった。ちょっと可哀想な事をしてしまった
と思ったが性欲がおさまらず、勝負なしで朝の5時ごろまで戯れてい
たが「無敵チンポ」になってしまった私は射精できなかった。
無敵チンポとは、元々遅漏の私だが勝負のスイッチが入ると自分がイ
キたくてもイケなくて延々と勃起しているという困った状態の事。
仕方なく薬を飲んで眠った。
明けて今日の昼 けたたましい携帯電話の音で目覚めた。相手はトニ
―だった、単体クラスのいい女をスカウトしたとの事だった。そして
トニーは「Nと3人で今からそちらに行っていいですか?」などと
とぼけた事を言う、私があれほど「3Pの撮影は暫くないよ」と言っ
たのを忘れているのだ。トニーがいい女をゲットして浮かれているの
は分かるが、寝起きの私は機嫌が悪い。
「何回言えば分かるんだ?あんたにとっていい女かもしれないが、俺
が気に入らなければ何の価値もない女なんだぞ、だいたい3Pは撮ら
ないって言ってるじゃないか、男は2人もいらねぇよ!」
そのようにいえば、いつものトニーなら「すいません・・・」と、小
さくなるのだが今日のトニーは違った。
「いや、3Pはしません Nさんと順番でヤリますから!」と、自
信満々で答えるのだ・・・。
「そういう問題じゃなくてね、トニーさんよ・・・」私は呆れ返っ
ってしまった。まったく朝っぱら(昼)から不機嫌な出だしだった。
こんな私だが、いい事もある。
昨日、師匠の紹介でカメラマン業界では有名な「イッシキジン」と
いう人を紹介してもらい私の現場にも現場スチールカメラマンと
して来てくれることになった。私はカメラマンの事はよく分からない
けれど、シャネルなど世界的にも有名な会社の仕事をしている日本
でも有数のカメラマンだそうなので、その人が私の現場で写真を撮
ってくれるなら私の作品にもハクがつくかもしれない。
世間では「エロ作品は芸術とは違う」と一笑されているが、その人
が撮ってくれれば私の作品も少しは違う評価をしてもらえるのでは
ないかと期待している。
裸にならざるを得なかった我々の、最低限の仕事をしている声無き
声が、少しは聞いてもらえるかもしれない。

51070(203)17〜19日     PM10時15分