ハワイ常夏の島2

監督は読み直すと私に言った。
「沖本君、死ぬなんて考えちゃいけないよ こんな私だって
 人様に迷惑かけなげら生き恥晒していきているんだ、君の
 作品に誤解があったのは申し訳なかった、私はね君のよう
 な人間を失うと思うと寂しいよ、プロダクションの頃を思
 い出してみなさいよ、何年もこの仕事やっている私だけど
 君みたいに現場を仕切り、水際立った腕で仕事をこなす人
 は他に見たことがないよ」
監督はこのように今度は一転褒めだした、監督の得意戦術
「褒め殺し」であることは分かっていたが、褒められて悪い
気はしないものだ、結局私はうまくまるめこまれてしまい、
将来の話などして2時間ほど会話をして帰ることになる。
帰り際、玄関まで見送ってくれた監督が「また来いよ!!」
と言ってくれたが私は自分からはもう会うつもりは無い。
監督に読ませた手紙の内容は、私は生きる証を立てるために
やったもので虐待が目的ではない、作品には本物とヤラセが
あり万全の策を尽くして撮影した、もし万が一にも警察沙汰
になるようであれば私はAV業界に生きる者として意地を貫く
ためにも、一命を賭して国家権力に抗議し、必要悪の世界か
ら世間に一石を投じたい、具体的な方法として大量の睡眠剤
と血が止まらなくなる錠剤、そして自決用の刃物を私は常に
携帯していた(今にして思えば本当に狂気であった)
ただ命がけで作った作品は、それなりの評価であったし、い
い思い出となっている。
自決用の刃物を包んでいた紙に
≪来るべき時が来たんだ、お前は男だ潔くやれ ためらえば
 苦しむだけだ ご両親様、先立つ不幸をお許し下さい。≫
と書いてあったと記憶している。