沈みゆく船

今日もいい天気だ
こんな日は釣りにでも行きたい 私は昨年まで週2〜3回ほど
釣りへ行っていた 静岡の真鶴へ車で行き、帰りに温泉に
入って帰ってくるのだ 釣果は多いときで10匹ぐらいかな。
私の釣りの目的は釣りではなかった
いま考えてみると私は死に場所を探していたのだと思う。
薬を常用していた私はひどく自己嫌悪に陥る時があり 将来への
望みはおろか今日を生きてゆくのも苦痛だった、結果的に海へ来
てしまっていた あれは本能的な行動だったのかもしれない
テトラポットに砕け散る波を一日中ながめていた、波に引き込ま
れたい衝動をじっとおさえながら釣りをしていたものだ。

私の知り合いに60代の方がいる
その方に当時の私の心境を相談したところ
「死を選ぶのはお前次第だが、残された人間の寂しさも気遣え」
と言われた。
私はその言葉で生かされてきた
私の師匠や親も親身になって下さった おかげで私は生きている。

私の師匠はその後会社を潰し進退きわまっていた
私はあの時の恩を返したい 師匠も同じ業界人である
沈み行く船に乗っているのだ
私ひとりではどうにもならないが、皆で力を合わせればなんとかな
る。脱出用ボートに乗るまでの時間稼ぎ それが私の仕事だ。